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「見ろよ、この星、まだ海の中にしか生物がいないが、今後発達しそうだぜ。」
第五惑星のとある法人企業の宇宙営業部、惑星研究課に所属する一人が、望遠鏡を覗きながら声を上げた。気になったので私も見てみると、言われた通り、生命体と呼ばれる存在は青い海の中にしかいないようだ。より詳しく観察してみると、とても美しい星であることがわかった。オゾン層があり、雲が浮き、陸地があり、何より青い海に覆われていて、見た目がとても綺麗なのである。光り輝く恒星の三番目を廻っているこの星は、今後生命が発達する可能性がありそうな星だった。私は急いで生命のチェックリストに「青い星、知的生命誕生の可能性:大」のフォルダに星のデータを入れた。
「いやあ、しかし、この星も運がいいですね。これから生命が発達してきたら、私達のような素晴らしい星と、お互いにコンタクトを取れる可能性があるのかもしれないのだから。」
我々の星は、惑星連合の間でも屈指のテクノロジーを有している。新しい星の立ち上げなど朝飯前の技術であり、我々のようなこの星に住む者も、技術力の高さを誇りに思っていた。昔は丸いスライムのような塊だった我々が、他の星とも交流を図れるくらいに進化し、なんと今では、自分の好きな姿をホログラム状で映し、他人とテレパシーを交わせるくらいにまでなったのだ。我々はスライム時代のことを恥ずべき時代だと感じていたが、技術が安定した今では、そんな姿などとうに忘れてしまった。今の姿に誇りを持っているのである。
付近の星を観察しても、知的生命体が発達する可能性を秘めている星はこの青い星だけだったので、研究はここで終了した。思いもよらない新しい星の発見に、伝えるべき技術は何か、どういう風にコンタクトを取るか、どんな資源があるのか、私たちの会社は大いに盛り上がった。最近は特に資源が足りなくなっており、惑星連合の中の貿易でも関税が高くつき、我々星人も嫌になっていたところだ。このような資源がたくさんある星の発見は、今後の星の命運を分ける程の、とてつもない快挙だった。
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一方、遥か銀河の先にある地球では、一つの星の発見が大きなニュースとなっていた。アメリカの宇宙開発に携わる大企業が発見したとのことで、「丸いスライムのような塊が暮らしている星」との報告が挙がっていた。地球以外の知的生命体を見つけたのは人類史上初のことであり、これまたとてつもない快挙だった。
星を発見した第一人者である偉い教授が、記者の前でコメントを残す。
「スライム状の生命体ですが、今後、我々とコンタクトが取れるくらいに知能が発達する見込みが大いにあります。もしそうなれば、これは大変なことです。どこの国も資源が足りない中なので、我々の未来に活路を見出せる時が来るのかもしれません。」
記者や会見を聞いていた人々は、大いに歓声をあげた。
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