第一章・―或る女の独白―

2/4
前へ
/10ページ
次へ
 人生とは、ロウソクのようである。  そんな言葉を何処かで聞いた事があるけれど、まさにその通りだと思ったねぇ。  だってさぁ、私の命はもう間もなく、亡くなるんだよ。  そんな私に奇蹟が起こったのはね、本当に燃え尽きてしまう前だったのさ。  そう、ロウソクの火が燃え盛りいつか消えてしまうように、立て続けに奇蹟が起こったのは、ほんの数日前だったのさ。  ねぇ、私はもう死ぬからさ、だからほんの少しだけ付き合っておくれよ。  煩い婆の戯言だと思ってくれても、良いからさ。  で、ね。  その肝心な奇蹟っていうのはさ、もう何十年も前に捨ててしまった娘と、数日前に再会出来たって事なのさ。  そうよ、よくある話さね。  そうだよ。多分あんたにとっちゃ、よくある話と聞き流す類なんだろうねぇ。  でもさ、私は嬉しかったのさ。  出会った娘と最期に食事してさ、笑顔で別れてねぇ。  それで、その時にね、その娘が教えてくれたんだよ。  来月結婚するんだってさ、長年付き合っていた男性と。  嬉しかったなぁ、娘も幸せになれるんだって思って。  子供の頃は苦労しただろうに、私のせいでさ……。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加