5人が本棚に入れています
本棚に追加
どうしようもなく辛い時や寂しい時はさ、この世の何処かで娘は生きているんだ。
そう思えばさ、やっぱりどんな辛い事にでも耐えられたんだよねぇ。
それで一度も娘に逢えないまま、いや、逢わないままこの歳まできちまったのさ。
そうすると、この身体にもガタがきてさ、病気になったんだけれど。
生憎とその日暮らしで生きてきた私には、病院に入院するお金もなくてさ、だからもう人生を諦めていたんだけど。
それが数日前、通行人にぶつかってお金を落とした時。それを無視した通行人を睨みながら、一緒に拾ってくれた人がいてねぇ。
何とね。それが偶然、幼い頃に捨てた娘だったのさ。
最初は親切な人だなぁ、そう思っただけだった。
だけど、お金を拾ってくれたお礼にと、少し飲む程度に誘って話を聞いていて、ようやく分かったのさ。
あぁ、これは間違いなく、随分昔に捨ててしまった私の娘だってね。
分かった瞬間嬉しくってさ、嬉しくって嬉しくって、涙が出そうになったんだ。
でもさ、何も知らない娘の前でいきなり泣いたら、それこそ変に思われるだろ。
最初のコメントを投稿しよう!