1人が本棚に入れています
本棚に追加
通行許可省
「今日は死にに来たと?」
少しボロくなった建物に似つかわしく無い、綺麗に整った受付。
そこに1人の少年が来ていた。
受付に座る男は手元の書類を眺め、少年の方に向き直る。
「東田ユウキくん、君まだ15歳じゃないか」
「わかってるよ……」
「なのに、死ぬと?」
「ここで死ななきゃ後々面倒臭いんだろ!?」
受付の近くに掲げられた、『通行許可省』の看板。
この省庁は、悲惨な現実が生み出した産物だった。
とある日から急増した自殺者、その自殺者が見つからず捜索隊などが駆り出される現状。
予算の無駄、それが政府の下した結論だった。
それならと作られたこの通行許可省は、自殺者を減らすという目的ではなく自殺者を把握するというもの。
自殺をするなら、この場所で申請をして正式な手続きをしてから死んでください。
その手続きさえしてくれれば、残された者にお金が給付されます。
ただし申請がなければ違法となります。
政府はもう、止める気など無かった。
最初のコメントを投稿しよう!