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正直レイジはこの仕事が嫌いだった。
申請書類を受け取り、判子を押して死にゆく人を見送る。
自分が手を汚す事は無いのに、給料が割に合わず高い。
目的の為に金が要る、ただそれだけの為にここに居るのだが、それでもこの省庁が嫌いだ。
こんなものを作った政府も大嫌いだ。
ましてや目の前にいるユウキは、まだ子供だ。
そんな子供が何故死に急いでいるのか、レイジは思わず気になる。
「……愛されてねぇんだ」
口を開いたのはユウキだった。
「俺は養子で来た、本当の家族じゃない。だから親父が死んだ後、母さんは俺の事なんか気にせず毎日どこかに出かけてる」
「それは、生活費を稼ぐ為の仕事をやってるのでは?」
「そこまで子供じゃねぇからそんな事わかってるよ。でもよ……」
ユウキの声が、微かに震え始める。
何か悔しがっているようであり、怒りが混じっているようにも見えた。
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