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「母さん、ごめん。俺とんでもない勘違いを……」
「気付いてくれたらいいの」
その姿を見て、レイジは手元の書類に手をかける。
ユウキの名前が書かれた申請書類、この省庁に勤める上では明らかに違反行為なのだが、躊躇わず書類をビリビリに破り捨てた。
「あんた……」
「君にはもう、申請する意思は無いだろ?」
ユウキは、黙って頷く。
カッコよく決めて終わりたかったが、この後上司に何と説明すればいいだろうと気が気でなかったレイジだった。
「申請書をビリビリに破るなんて、お前は何てことをしてるんだ!!」
案の定上司にこっ酷く叱られ、話半分で適当に聞き流して何とか乗り切る。
げっそりした表情のレイジを見た同僚は、皆笑って茶化し始めた。
さっさと目標金額貯めて辞めてやると決意した直後、ポケットに入れていた携帯が振動する。
メールが来たのだと確認すると、思わず笑みが溢れた。
「出来るじゃないか、満面の笑み」
メールには写真が添付されており、そこには仲良くご飯を食べるユウキと母のマナミの姿が写っていた。
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