ラジオ(後半)

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「そろそろお別れのお時間ですね。 みなさんありがとうございました。」 白峯久美子が番組を締めようとすると、 男が口を挟んできた。 「待てよ、正解発表しろよ。 俺が何のために来たか分かるよな。 代わりに話してやるよ、人殺し。」 人殺し。刺々しい言葉。 妹の事故を恨んでいる人物は他にもいた。 妹の旦那、高木だ。 「おまえはわざと殺したんだろ。」 「違う、そんなことする訳ない。」 「自分が諦めた夢を妹は叶えたもんな。 憎んでたんだろ。」 妹も姉と同じ歌手の道へ進んだ。 姉の夢でもあったCDデビューを果たし、 これからという時に起きた事故だった。 だからこそ、高木は白峯が わざと事故を起こしたと疑っているのだ。 「私の夢を妹が叶えてくれた。 私にとってあの子は自慢の妹だった。 これ、いつも持ち歩いてるお守り。」 「このCD。あいつの。」 「このラジオのエンディングの曲、 あの子の曲なの。 世に出回ることはなかったけど、 こうして人に聴いて貰えてる。」 男のすすり泣く声が聞こえてくる。 それを消し去るように 温かな声のエンディングソングが そっと包み込んでいった。
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