4人が本棚に入れています
本棚に追加
そんな店に通う日が続いた。
店主のコーヒーを飲み始めてから自分自身の変化があった。
リスカをしなくなったのだ。
感情が少しずつ出せれるようになっていった。
ゆっくりだがほんの少しずつ戻ってこれた。
学校に行きたい。
でも傷が濃く腕に残っていた。
毎日行けるだろうか。
不安が残った。
でも、今の状態なら大丈夫だと思えてしまうぐらいになった。
傷がほんの少し薄くなってきた頃、休学していた学校を本格的復帰することにした。
それまでは、放課後に少しずつ行ったりしていた。
生活を立て直しを頑張った。
昼間には開いていないためこの店に入るのは実質最後だった。
店長にもそれは伝えていた。
「今日が最後ですね。」
店主がそう呟いた。
僕は、ずっと聞きたかったことがあった。
なぜ、店に入れたのか。
僕は店主に尋ねた。
店主は少し考えたように頭を捻った。
「貴方を選んだ理由ですか。」
「店に来た時にすぐ分かったからです。私も同じだったからです。」
「深くてなかなか抜け出せない闇にいましたから。」
店主は、なぜ闇にいたのかの事情は言わなかった。
そしてどうやって抜け出せたのかもだ。
でも、腑に落ちた。
店主と話をしていると度々僕ではなくどこか過去の自分を思い出している気がしたからだ。
「生きるのをやめないでください。少し足掻くだけでも、違いますよ。」
店主はそう言って笑って見せた。
僕はコーヒーを飲み終わると立ち上がった。
「ありがとうございました」
そうお礼を言い立ち上がった。
<完>
最初のコメントを投稿しよう!