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ある世界の話…
娘のもとに、一通の手紙が来た。
森の奥の家に住む知り合いの若い男からで、数年ぶりに娘に会いたいとのこと。
彼女はその男と幼い頃に仲良く過ごしており実の兄のように慕っていたため、喜んで会いに出掛けることにした。
馬車を借り森の入口まできて一人迎えを待っていると、突然黒い獣が娘に飛びかかった。
「きゃああ!!」
獣は娘を咥え上げると、凄い速さで森の奥に向かって行った。
「は、離し…て…!!誰か…お兄ちゃん…!」
彼女は成すすべも無く獣に攫われ、森の奥にある家に辿り着いた。
(ここは…お兄ちゃんの家……!?)
着いた場所は、娘が会いに来た男の住んでいるはずの家。
戸の前で獣はなんと二足に立ち上がり、彼女を抱えたまま乱暴に戸を開けた。
「助けてお兄ちゃん…!!」
娘は家の中にいるであろう幼馴染の男に助けを求めた。
すると、
「…あの男のことか……?」
「…え!?」
自分を抱き抱えた獣はさらに、二足で歩きながら男の家に入り、娘に人間の言葉で口を利いたのだ。
「あ、あなた……」
「……。」
獣は何も言わず奥の部屋へ、抱えた娘を押し込み、自分も部屋に入り鍵をかけた。
「お、お兄ちゃんは…私の大好きなお兄さんは…どこへ行ったのですか…!?」
娘は怯えながら獣に問いかけた。
すると、地を這うような低い声で、唸るように獣が答える。
「…あの男は……俺が喰った…!」
「…!!」
娘はその答えに絶句した。
(お兄ちゃんが…お兄ちゃんがこの獣に……?お兄ちゃんは、もう……)
「う…嘘…!お兄ちゃん…お兄ちゃん!!」
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