私たちのすきなひと

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 駆け足で来たのがバレないように、一旦停止で呼吸を整えてからドアを開けた。ミズキの部屋は昼間なのに暗い。コバルトブルーのカーテンが締め切られているせいだ。  ベッド横のテーブルをみると、まだ誰の器も置いてなかった。 やった! 一番のりだ! うれしさを隠しきれない。こういう時はスピードが一番だと思う。 専用キッチンのある部屋万歳! 多少家賃は高くてもご愛嬌だ! もし私が死ぬ時は遺言には専用キッチンのあるシェアハウスに住めと残そう。そうしよう。 「……つばき?」 かすれてガサガサの声がベッドからした。かわいそうに。商売道具の喉がこんなに腫れちゃったら仕事もそりゃ休むしかないよね。 「椿はカフェにいったよー。今日、遅番なんだって」 「あー、……ごめん。……誰? いま起き上がれなくって……悪いな」  ベッドの中から、力ない声がする。いつも元気なミズキのそんな声にもキュンキュンした。ああ……、護ってあげたい。私が。
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