第1章4節 初日の帰り道

3/5

8人が本棚に入れています
本棚に追加
/49ページ
 その後も適当に会話を返していると、やっと夏島駅に着いた。夏島総合高校に通う生徒のほとんどは夏島駅から下り方面の地域に住んでいる人が多いらしく周りにいるほとんどの生徒は下り方面のホームへと向かっている。  きっと横の面倒な奴も下り方面だろう。上り方面から来ている旭川にとって友達が出来た後いつも駅で離れ電車では一人になるのではないかと不安になっていたがこういう面倒なのから解放されるなら少しはいいかなと思ってしまった。 旭川にとしかし自分は上り方面から来ているためやっと横にいる面倒なやつから解放されると安堵しきっとこいつも下りだろう。やっと解放されるな。早く帰りたい。 「じゃ、俺上りだから」  改札に着いたとこでそう一言だけ言って俺は別れようとした。しかし、 「え、旭川も上りなの?一緒じゃん」  ……嘘だろ。まだこいつと一緒にいないといけないのかよ。早く一人にしてくれよ。早く帰らせてくれ。  夏島駅はそこまで大きい駅ではない。朝夕のラッシュ時は10分に1本、昼間は20分に1本しかなく、生まれてからずっと10分に3本くらい電車が来るのが当たり前の地域に住んでいる俺としては20分も電車が来ないなど考えられない。しかも1本逃したら20分も待つなどめんどくさすぎる。  それだけではなくこいつが横にいるとか最悪だな。早く電車来いよ。早く帰りたい。 「なぁ旭川の家の最寄り駅ってどこだ?」  電車が行ってしまった直後と分かりイラついている俺を気にせずこいつは普通に聞いてきやがった。  入学式前とさっきの正門の時は強引で商店街歩いてるときはすごいこっちの様子をうかがっていたのに今は気にしないってこいつよく分かんねぇな。 「NA-19だな」  確かNA-19だよな。なんか駅名の横にあったやつ。自信ないけど。 「なぁ旭川」  NA-19って何と聞かれるかと思ったが何やら違うような気がした。 「明日先にクラスの席に座った方が帰りに商店街でなんか奢ってもらうのはどうだ?」  ……人の話聞いてた?しかもまた賭け事の事を考えてたのかよ。飽きねぇな。 「お前そういうの好きだなぁ」 「んじゃそう言うことで」  うわーまた強引に決めやがったな。こいつとずっと一緒にいたら卒業まで何回賭け事やらされるんだよ。  早く電車こないかな。なんかもう早く帰りたいというよりもこいつと早く別れたいという考えしかなくなってきた。
/49ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加