第1章6節 2日目も駄目でした。

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 帰りのSHRが終わり、数時間前まで活気にあふれていた校内が静寂に包まれている中、俺と奴は教室の掃除をさせられていた。 「なぁ旭川、疲れたしもう帰ろうよ~」 「うるせぇそのセリフ何回言ったら気が済むんだよ日が暮れるぞ」  あの朝のSHR(公開処刑)の後、HRの時間は全教科分の教科書類を理科室から教室まで運ぶのを押し付けられ、学年集会の後は椅子の片付けをさせられ、放課後は教室の掃除と1日中雑用をさせられている。  雑用をやらされること自体はそこまで嫌ではないけれど、横にずっと奴が一緒にいるのが嫌すぎる……。あー早く帰りたい。 「外結構いい景色だなー」  はぁ……なんでさっきから少しでも目を離せばすぐに押し付けられたこと以外の事を始めるのかなぁ……。早く帰りたいんだからさっさと掃除してくれよ。 「なぁ旭川見てみろよこの景色、この教室からの眺め結構よくないか?」 「それやったら終わりなんだから話をそらさないでさっさと片付けろよ」 「あーおっけ」  また話を逸らしやがってなんて思いながら自分の担当分を終わらせた俺は奴が片付けてる間に外を見てみると、空は茜色に染まり、太陽はすでに沈み始めていた。  ーーー綺麗な景色だな。  こんなきれいな夕焼けを見たのはいつぶりだろう。すごい落ち着く。 「ほら、結構きれいな夕焼けだろ」 「ああ、すごい綺麗だな」  さっさと片付けさせてからすぐに帰る準備をしようと思っていたのに気づけば奴と一緒に外の景色を眺めていた。 「俺2日連続でやらかしてなんかやる気なくなってきてたけどなんかこの景色見てたら明日からも頑張れる気がしてきた」 「旭川ってそんなこと言うのか。ちょっと意外だな」  お前が俺に話しかけなければ2日連続でやらかさずに済んだんだがなと言おうとしたけれど、今はこの景色をゆっくり眺めたかったからやめた。  5分前まで早く帰りたいなんて思っていたけど今はちょっと景色を眺めていたい気分になるとは思ってなかったな。 「なんか旭川と二人できれいな景色を見るの青春っぽいな」 「……うるせぇ今の一言で全部台無しださっさとゴミ集めろ帰るぞ」 「旭川急に冷たくなるなよー」  はぁ……早く帰る支度をしてからさっさと帰ろう。
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