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「皆さん席の移動は終わりましたね、ではまず隣同士で自己紹介をしてみてください」
先生の指示に従いクラスのみんなが自己紹介を始める。
……さっきまであんなに静かだったのにみんな普通にしゃべれるとかちょっと想定外だな。俺も普通の人くらいには喋らなければ。
「どっちから自己紹介する?」
とりあえず頭に浮かんで来た言葉を言ってみたけれど俺が先に自己紹介することになったらどうすればいいのかわからない。
「私が先に自己紹介しようか?」
「あ、わかった。ありがとう」
俺が焦っているのに気付いて気を利かせてくれたようで申し訳ない。そんなこと考える暇があるなら自分の自己紹介考えないといけないけれど。
「私の名前は楢原香凜です。金沢台中学校っていう所から来ました。よろしくね」
「俺の名前は旭川健。よろしく」
「じゃあこれからは『たけちゃん』って呼ぶね!」
……え?あ、あだ名か。あだ名なんて今まで1回も付けられたことなかったから一瞬何のことか分かんなくて脳がフリーズしちゃったよ。
「よろしく、たけちゃん」
「あーうん。よろしく」
女子にあだ名で呼ばれるなど想定外だったので返事が微妙になってしまった。
「旭川、貴様もう女子にあだ名で呼ばれるとかやっぱり俺を置いて先にリア充になるつもりだろ。許さんぞ絶対に地獄から呪ってやる」
こいつ俺を恨みたいのはいいけどお前もう死んで地獄にいる前提なの?ていうか俺も楢原さんが何言ってるかあんまり理解出来てないからね?
ここは一応反論しておこう。
「知るか楢原さんが勝手に付けてきただけだ。ていうかお前、住んでる所近いんじゃないか?楢原さん金沢台中らしいぞ」
「いや、俺は金沢南中だから住んでる地区違うと思う。俺楢原さんの事知らないし」
「私は綾瀬くんのこと中学校の時から知ってるよ」
おっと意見が違っているな。奴がなんか隠してるのか?
「……え?どっかで会った事あったっけ」
「塾一緒だったじゃん。クラス違ったけど。私たちの代で綾瀬くんの事知らない人なんてあの塾にはいなかったよ?」
一瞬で奴の顔が凍りついた。こいつ中学時代なんかあったのか?
「楢原さん、こいつ中学時代塾で何してたの?」
「あああああああああ楢原さん何も言わないでお願いだから!!」
ちょっと気になったので楢原さんに聞いてみると奴は物凄いスピードで楢原さんに土下座で頼み込むが楢原さんはえ〜?という反応。
こんな反応をされてはこいつの黒歴史を聞かないわけにはいかないな。
「楢原さん、こいつが何したか教えてくれないか?」
「え〜どうしようかな〜」
「旭川お前お願いだから詮索しないでくれ頼むから!!」
うーんなかなか抵抗してくるなぁ。こんな反応をされては聞きださないわけにはいかない。
「え、聞こえないなぁ?ごめん楢原さん話始めていいよ」
「え〜色々ありすぎて何から話せばいいか分からないな〜」
「楢原さん頼むからなんも言わないで!!あと旭川貴様俺に対する扱いが酷すぎるぞ直した方がいいからな!!」
「ちょっとそこ、何してるんですか?旭川くんは早く綾瀬君の頭から上履きを離して。綾瀬君は急に土下座なんてしないで早く座りなさい」
せっかく足でやつの頭を押さえて動きを止めていたのにここで先生に怒られてはこれ以上聞ける雰囲気ではなくなってしまった。
……畜生奴の弱みを握れると思ったのに。
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