第1章9節 部活どこに入ろうかな

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 既に時間は完全下校の10分前となってしまっている中、俺たちは昇降口を見つけられずに校内を彷徨っていた。 「なんで旭川案内図の写真撮ってなかったんだよ……」 「いやみんな撮ってなかったし大体最初にあんなとこに行ったのお前じゃん」 「……はぁ。疲れた」 「さっきは疲れてなかったんじゃないのか」 「それは楽しかったからだよ」 「はぁ……」 「……」  気づけば俺も奴もきれいに沈んでいく夕陽を見ながら途方に暮れていた。  誰か先生が通るまでこのままかなーなんて考えていると急に後ろから扉が開く音がした。 「あっ、たけちゃんと綾瀬くんじゃん何してるの?」  後ろを振り返ってみるとそこには楢原さんがいた。 「ちょっと迷子になっちゃって。楢原さんこそ、こんなところで何してるんですか?」 「私、生徒会に興味があって見に来てたの」  ここって生徒会室だったのなんて思って見上げてみると、確かに扉の上には生徒会室と書かれていた。  へーこんなとこにあるのか。生徒会室なんて入る事なさそうだななんて思っていると奥から先輩っぽい女子が出てきて目を輝かせながら、 「君たちも生徒会に興味あるの!?」 「い、いや俺たちはたまたま前を通っただけというか……その、すいません」 「そっか……」  やばいすごい目を輝かせていたのにがっかりさせてしまった。罪悪感凄い。  とりあえず隣の奴になんか言ってと目線を送ると奴は周りを見て一言。 「生徒会室ってこんなよく分かんないとこにあるの?なんか見た目も普通の教室よりもぼろいし中も狭そうであんまり過ごしたくないところだな」  ……こいつ、先輩が目の前にいるのに思いっきり言いやがったな。先輩めっちゃ悲しそうな顔してるぞ。  とりあえず注意だけしようとした瞬間楢原さんがこっちを向いて一言。 「綾瀬くん?それは気づいても言っちゃいけないことなんじゃないかな」  楢原さん笑いながら普通の声で言っているように見えるけど目が笑ってない。めっちゃ怖いんですけど。いやほんと怖い。 「いやいや私もずっとそう思ってるし楢原さんも気にしなくていいよ。二人とも急に引き止めちゃってごめんね」  先輩は苦笑しながら言ってくれたけれど、その横で楢原さんがめっちゃ怖いオーラを出している。楢原さん絶対心の中では許してないんだろうな。  となりで死を覚悟したような顔してるやつは明日生きて学校に来れるのだろうか。
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