第1章10節 初めての生徒会

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 奴が失言をした次の日、いつものように夏島駅で降り改札を出ると奴の姿を見つけてしまった。 「おはよう旭川」 「……」  俺は無視して歩き始めたが奴は当たり前のように横に並んで歩き始めながら話しかけてきやがった。 「無視すんなよ〜。一緒に登校するの2日ぶりじゃないか。俺がいなくて寂しかっただろ?」 「お前、俺に殺されるか楢原さんに殺されるかどっちがいいか?選択権はくれてやるぞ。お前の死刑は確定してるんだからな」 「朝から酷いな!」 「どうせ一人で学校に行って教室に入る勇気がなかったから俺を待ち伏せして着いてきてるのか?」 「え?あーいやソンナコトナイヨ……」  やっぱりそうか。まぁこいつが着いてきたところで俺が何か罰を受けることはないだろうし横から奴が罰を受けるのをゆっくりと眺めることにしよう。  助けてくれーとかどう謝ればいいかな?だのずっと言ってくる奴に対して知らんと適当に受け流しながら登校し教室に入ると教室の中に楢原さんの姿は見当たらなかった。 「楢原さんいない?いないよな?もしかして欠席?」 「いや席に荷物置いてあるからもう来てるんじゃないのか?ていうかお前席近いんだからどれだけ避けても確実に会うことになるんだぞ?」 「いや、SHR中とか授業中はさすがに何もしてこないだろうから休み時間すぐに逃げれば大丈夫だ」 「お前謝る気ないのかよ……」  呆れながら席に着くとちょうどチャイムが鳴った。チャイムが半分くらいなったとき楢原さんがパタパタと教室に入り自分の席のところに戻ってきた。  しかし、戻ってきた楢原さんはいつものように俺たちにあいさつをしてきた。 「あ、おはよう。たけちゃん、綾瀬くん」  ……あれ?昨日の事もう怒ってないのかな?昨日凄い怒ってるように見えたのに。もしかして楢原さんって次の日になれば忘れてる人? 「お、おはよう、楢原さん」 「……」  とりあえずいつものように挨拶を返すと、楢原さんはふふっと笑い、 「昨日の事で怒らないから安心して。そもそもたけちゃん別に悪いことしてないんだから怒らないよ」 「そうだね。あと昨日昇降口までの行き方教えてくれてありがとう」 「どういたしまして」 「……」  さて、とりあえず俺の安全は確認されたけど奴の方はどうなんだろうか。  後ろの奴を見ると物凄い警戒しているようで椅子を引いて逃げる準備をしていた。 「あ、別に綾瀬くんにも怒ってないから謝る必要はないよ?」  楢原さんがそういうと 「えっ怒ってないの?」 「別に怒ってないよ。別に謝る必要ないじゃん?」 「なんだどうすればいいかずっと気にしてたわー」  この時は俺も奴も「私に」という部分が強調されていたのを全く気づかず、楢原さんは完全に許していると勘違いしてしまった。
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