第1章1節 ハロー、俺の新しい学び舎

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 ついにこの日がやってきた。私立夏島総合高校入学式。今日から俺は生まれ変わるのだ。ハロー高校。グッバイ中学までの俺。  正門を通ると、まず入学式のプログラムを渡された。こんな所で渡されても困るのだが……。  思っていたよりも風が強く渡されたプログラムがぐちゃぐちゃになりつつ正門から奥へと進むと、奥で何やら案内をしている人がいた。 「ご入学、おめでとうございま~す! 入学式のプログラムを受け取りましたら、そちらのクラス名簿を見て、自分のクラスが確認していただき、奥の体育館へとお進みくださ~い!」  生徒会の腕章を腕につけた女子生徒が頑張って大きな声で案内をしているもののみんな話しながら歩いていたりするので聞いていなかったりそもそも聞こえていない人もいるのかとりあえず歩いているもののどこに行けばいいのか分からないという人がほとんどのようで正門の近くに停滞している人が多く混雑していた。もう一人ぐらい案内役を配置して動線などを手分けして案内した方がいいと思うのだが。  正門付近にいても仕方がないのでとりあえず奥へと進んでいくと大きな紙に印刷された学年の名簿が校舎の壁に掲示されていた。しかし保護者も生徒も1か所に集まっているせいでひどく混雑しており、自分のクラスを探すのに時間がかかりそうな状態だった。  名簿を2か所に設置するとか、正門で渡された入学式のプログラムの裏に印刷するとかはできなかったのだろうか。そんなことを思いつつ自分の名前を探すとすぐに自分の名前を見つけることができた。       1年B組1番 旭川 健  こういう時に自分の苗字の1文字目があ行だと見つけやすくて助かる。周りよりも早く自分の名前を見つけられた俺はすぐに母にクラスと番号を伝え、入学式の会場である体育館に向かった。  体育館に入ると、受付と書かれたテーブルがいくつか配置されており、教員らしき人が名簿にチェックを入れている。しかしどこで受付をすればいいのかが分からない。  とりあえず空いていそうな列に並びながら前の方で受付している人達を見てみるとクラス、出席番号を書き教員らしき人がチェックをつけているようでそこそこ時間がかかっていた。これ最後確認する手間が面倒だとは思わないのだろうか。クラス別に受付を配置した方がチェックする手間や時間が減って楽になると思うのだが。  そんなことを考えながら自分の番が来るのを待っていると気付けば後ろの方がどんどん混雑し始めていた。やはり正門付近ですぐに奥に抜けたのは正解だったと思いつつもっと効率よくやってくれよとも思っていると自分の番が来た。  今日から俺は生まれ変わるんだ。明るい声で話さねば。 「1年B組の1番です」 「旭川健くんですね。入学式のプログラムは受け取りましたか?」 「はい、受け取りました」  お、なかなか上出来な明るい声じゃないか?なんて思いながらプログラムを見せると受付の人は「汚いなぁ……もっと奇麗に持って来いよ」と言いたいような目線を浴びせてきながら、 「これ、新しいプログラムです。こっちを使ってください」と新しいプログラムを出してきた。  こっちにもある上に汚くすんなよとか思うんだったら正門で配らないでここで配れよ……。  一瞬イラッとしてしまいふざけんなよというオーラを出してしまいそうになったが俺は変わると決めたんだ。我慢しなければ。 「すいません。ありがとうございます」 「では、正面右奥の1年B組1番と書かれた席に座ってください。保護者の方は保護者席におかけになってお待ちください」 「わかりました。ありがとうございます」  俺って結構演技上手いのでは?などとどうでもいい事を考えながら俺は1年B組1番の席へと向かった。
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