第1章1節 ハロー、俺の新しい学び舎

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 1年B組1番の席は一番前の列の右端だった。前には司会が立ち式を進める場所と思えるような机が配置され横には教員が座るのであろう席が並べられていた。  俺は正直この席が嫌いである。ずっと色んな人にみられるし寝たりすればすぐにバレて怒られる。  こういう席やっぱりこういう所か、と少し面倒に感じてしまったもののすぐにしっかりしなければと自分を切り替える。  1年B組2番の席には既に人が座っていた。ザ・体育会系とまではいかないがそこそこ体格が大きく身長も自分と同じくらいのまぁまぁ高そうな男が座っていた。女だとキョドって気持ち悪いと嫌がられ即終わりだと思っていたので春休みに謎の練習を繰り返していたものの妹にキモ、とバッサリ言われたので男で良かったな、気が楽だと安心しつつ1番の席に着席する。  するとすぐに2番の席に座っていた男がこちらを向き何か言いたそうな雰囲気を出してきた。しかし何も言ってこない以上どう反応すれば分からずとりあえず気付いていないフリをしつつ周りを眺めてみる。  前にはデジタル時計がありプログラム通りなら1分後には式が始まるというタイミングだった。先が始まれば何もされないだろうから早く入学式を始めてくれ、と思ったものの入学式が始まる気配はしない。  何でだよと思いつつ右側や後ろを見ると教員が慌ただしく動き回っており、とても入学式を始められるような状況ではなかった。  ふざけんなよ早く始めろよと思うと2番の席の男が一瞬ビビり怯んだように見えた。  オーラが出てしまったのではと焦り深呼吸をして無害な人ですとアピールするかのように座り直すとそいつも前を向き深呼吸をしていた。  何か嫌な予感がする。そんなことを思った瞬間2番のやつはこっちを見て笑顔で話しかけてきた。 「おはよう、俺の名前は綾瀬健。よろしくな」 「それはもっと前に言うべきセリフだったな」  正直に思っていた事を言ってしまった。しまったと思い隣を向くと奴(名前は聞いてなかった)は顔が引き攣ってしまいその場が嫌な沈黙に支配されそうになってしまったのでどうにかしなければと思ったもののどうすればいいか分からない。  これは完全にやらかしてした。想定外の事態だ。とりあえず何事もなかったかのように会話を続けてみよう。  いや、何で言えばいいんだ……?とりあえず奴(名前なんだっけ?)と同じような事を言ってみよう。明るく、元気よく、何事をなかったかのように。ここでつまずけば俺の高校生活に支障が出てしまう。 「おはよう、俺の名前は旭川健だ。よろしく」  とりあえず同じような話し方で返してみる。やっぱり俺演技上手くね?と思ったものの奴(名前は知らん)は一瞬固まったものの何かを察したのか急に緊張がほぐれたような雰囲気を出してきた。 「下のたけるって名前、健康の健って書くの?」 「ああそうだよ」 「なら俺と一緒だな。出席番号が隣で下の名前が一緒なんて珍しい」 「確かに」  とりあえず会話を続けてみようと努力してみたもののここで会話終了。  ……あー、えっとなんか話した方がいいよな?うーん……。 「やっぱりお互いまだ緊張するよな」 「あ、ああ中学校と違って知らない人が多いしな」  とりあえず返すことが出来たがお前もう緊張してなさそうじゃん。緊張してるように見えているであろう俺に合わせてくれたのだろうか…? 「なぁ旭川。俺とちょっと賭けをしないか?」
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