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「なぁ旭川。俺とちょっと賭けをしないか?」
「嫌だ」
「即答かよ⁉︎」
よく知らん奴と賭け事しようとかこいつ頭大丈夫なんだろうか。
「そもそも賭け事とか嫌いだし知り合ったばっかの人間と賭け事とかしたくねぇ」
「まぁいいじゃねぇか。まだ入学式始まる気配しないし暇だだろ?」
確かに教員はまだ慌ただしく駆け回っていて入学式が始まる気配など全くしない。このままこいつと嫌な沈黙が続くのは面倒である。こういう事をしてやるのが付き合いというやつなんだろうか。
「分かった。何を賭けるんだ?」
「え、何を賭けようか?」
「お前が提案してきた事だろ……」
さてはこいつ何も考えてないな?何でこんな事提案してきたんだこいつ。
「というかこれ負けたら何する気なんだ?」
「え、どうしよっか?」
「お前それも考えずに提案してきたのかよ……」
思わず溜め息をしてしまうと奴(名前なんだっけ?)はすぐに考えだした。
「そうだ、旭川は3番の人の名前分かるか?」
「いや、わからないな」
「なら男か女どっちが来るか賭けてみないか?」
「負けたら変な事させられるとかだったら拒否するが」
「いやそれも考えた。勝者が何か困ったらその時は敗者が助けてあげるってのはどうだ?」
てっきり女装させられるとか絶対に嫌な事を押し付けるのではないかと思っていたので少し意外だな、と思いつつそれならいいかと条件をのむことにした。
「出来る範囲だって条件ならいいぞ」
「よしこれで成立だな。旭川はどっちに賭ける?」
「俺の予想は女かな」
「旭川が女に賭けるなら俺は男に賭けよう」
すぐに困りそうな気がするしここで勝っておきたいな。なんて思っていると後ろからこちらに向かってくる足音が聞こえた。
「来たか?」
「多分な」
そしてその足音はどんどんこちらに近づき、俺らの前を通過した。女か。3番だといいな。ちらっと左を見ると、その女は3番の席に座った。
よし勝ったな。心の中でガッズポーズをして左を向くと、綾瀬はちょっと笑いながら
「お前の勝ちか。まぁ1/2の確率だし仕方ない」
言葉ではそこまで悔しそうではなかったがとても悔しそうな顔をしていた。1/2でも結構悔しいってこいつ負けず嫌いだったりするのだろうか。
なんて思っていると、3番の席に座った女の子はこそこそ話している俺たちの方を見ながら
「ねぇねぇ、私、出席番号29番なんだけど席が分からないの。教えてくれない?」
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