第1章2節 めんどくさいやつに絡まれた

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「では、生徒の皆さんは担任の先生の指示に従って、教室への移動を開始してください」  目を開けると入学式はすでに終わっているようで移動の指示が開始されているところだった。  入学式が始まってすぐに睡魔に襲われてちょっと目を閉じてたらずっと寝てしまっていたのか。完全にやらかしたか?これ後で呼び出し食らっちゃうのかな……。 「旭川、お前大丈夫か?」  急に左から話しかけられて誰だと思ったけどそういや入学式前に誰かに話しかけられて賭けをさせられたんだっけ。名前なんだっけ……?綾部? 「お前緊張して固まってたのか?校長に名前呼ばれても返事しないし全員が起立したときにお前だけ立たないし」  一気に眠気が飛び冷や汗が出てくる。俺入学式からそんなやらかしをしてしまったのか。こんなことで生徒や先生に覚えられるとか絶対嫌なんだけど。 「まぁ入学式の事なんて生徒はみんなすぐ忘れるでしょ。先生には忘れられなさそうだけど」  横の無能のフォローなど全く意味もなくこれからどう挽回しようかということしか頭にはなかった。 「俺あとで呼び出し食らうかな?」 「めっちゃ見られてたし後で呼び出しくらいはされるんじゃないか?」  やっぱり入学式で一番前の席で爆睡して呼びかけにと応答せず起立もしないような生徒は絶対呼び出し食うよなぁ……今まで1回も食らったことなかったのに。 「んでお前大丈夫なのか?顔も真っ白だし」 「あー、爆睡してただけだから大丈夫」 「え、あれ緊張で固まってるんじゃなくて寝てたの!?」  すごい驚いてるようだけど、別にそこまで驚くようなことじゃないと思うんだけどな。 「まぁ中学の時いつも授業中目を開けながら寝てたし問題ないと思う」  中学の時に気づいたら習得していた俺の特技。  この特技のおかげでいつも授業中起こされて怒られることがなかった。授業なんてクソつまんねぇ時間でしかないからな。もっと有意義に時間を使わないと。 「目を開けて寝て目が乾燥しないのか?」 「安心しろ。目薬を持ち歩いている」 「持ち歩いてるって外で目を開けながら寝るとかやばい奴じゃね?」 「俺はもともとぼっち……いや授業終わりのチャイムで確実に目が覚めていたから問題なかったんだよ」  中学時代の事を言いかけて急いで誤魔化していると何やら綾部の顔が青白くなっている。こいつの方がやばいんじゃないのか? 「おい、お前人の話聞いてんのか?」 「なぁ旭川?」 「なんだ?」 「1年B組の人たちはどこだ?」 「そんなの横にいるんじゃ……あれ?」  周りを見ると、もう既に最後のクラスが移動を開始していた。確かこの学年は6クラスあったはずなので今移動しているのは1年F組となる。ということはB組はとっくに行ってしまったのだろう。  そして周りから「あの子たち何やっているんだろう?」という目線を俺たちは受けていた。 「……旭川」 「なんだ」 「助けてくれ。さっき俺賭けで勝ったし」 「いや俺も同じことで困ってるから無理」  ……こんな奴と話してるんじゃなかった。
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