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【現代版神話】
「本日はお集まりいただきありがとうございます。つきまして我が組織カミーダについてご説明させていただきます。まずは代表の――」
高級ホテルの大きな会場で、きらびやかなパーティーが開かれていた。大柄の男がパツパツのTシャツをきて壇上に上がると、会場は拍手で包まれた。二人の青年もまた、なんとなく拍手をする。
「彼が水の神の生まれ変わりかな」
ライトブルーのドットシャツを着た茶髪の青年は、入り口で出会った青年に尋ねる。
「どうだろう、その割にビビッとこないですね」
黒髪の、青いジャケットを羽織った青年は淡々と答えた。ドレスコードは青なのだ。
「胡散臭いパーティーだと思ったけどまさか色の神に会うなんて」
それだけで来たかいがあった、と続けた。二人は自分が神である、という夢をよく見る。全く知らなかったのに、受付で会った瞬間ビリリと背中に電流が走った。そして「ああ、夢で会ったな」と気付いた。
「僕も驚きましたよ。まさか重力の神がこんなに今どきな風体だとは思わなかった」
あはは、と重力の神は上品に笑った。
「――以上です。それでは皆さん、パーティーを存分にお楽しみください」
わあっとまた拍手が上がる。
「そういえば自己紹介がまだでしたね」
拍手をしながら色の神が言った。
「僕はシキムラカオル」
すっと手を出す。
「俺はオモハラダイキ」
よろしく、と握手をした。
「あまり夢を持ち込むと帰れなくなるよ」
「え?」
雑音に紛れて声がした。
「カオル、どうしたの」
「いや、なんでも」
ダイキには聞こえなかったようだ。今のはきっと、他の神だ。このパーティー、ざわついた感じがする。カオルは手に取ったシャンパンを一口飲み、舌の上でチリチリ転がる泡で誤魔化した。
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