#4 百鬼夜行(6)

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「そうでしたか。申し訳ないことをしてしまいましたね。ジュエルさんは大丈夫でしょうか。女性ですしお顔でなければよいのですが」 「翼らしいよ。飛べるし大丈夫なようだ。片思い相手の右翼長ホープの前でいい格好を見せたかったらしいよ」 「健気ですね。いつか恋が実るといいですね。何かお詫びの品を差し上げたいのですがコウモリは何を好むのでしょうか」 「それについてドリームから提案を預かってきたよ。えーと『義理堅い店長さんのことだから謝罪の品を用意したがるだろうな。ただしメスだからとてリボンなんか貰っても飛行に邪魔なだけでそんなものは却下だぜ?送るなら食い物。虫や肉でいい。今夜涼真の家のパトロールに行くからその時に置いといてくれ』はい以上。ふう疲れた」 長話に吐息を漏らすも、ドリームに「妖怪呼集の誘導者は清水店長の疑いアリ」と告げ口したのはこの王子様。 まったく悪気なく、いつものふわふわな雰囲気を漂わせての何気ない流れからであった。 清水もどこからリークされたかなんて気にも留めず、蝙蝠の班長殿にひたすら敬服だ。 「さすがですねドリームさんは。賢くてこちらの思考をすぐに読む。その上でアドバイスまでして頂き頭が下がります」 「なら帰りにボクが生肉を買って、家の庭に置いておきます」 自宅が舞台とあって涼真が役目を名乗り出る。 彼もドリームや20匹の仲間たちが大好き。それに毎夜パトロールまでしてもらい、謝礼がしたいと常々考えていたのだ。 「手間をかけてしまいますがお願いします。お金は渡しておきますね」 店長よりこのように提示され涼真は従順に頷くも、翌日からは自費で生肉を買い庭に置いた。 2匹で一組。そのペアが日替わり交代でパトロールに来てくれる蝙蝠たち全員に、謝礼を振る舞ってあげたかったのだった。
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