ヘルズ・スクエアの子供達~パートⅡ~マッシュのお話

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1・  俺はマッシュ。十七歳。ホープ島で生まれ育った。  今は島を出て、自立っていうのかな、一人で生きていくのに悪戦苦闘中。勉強と仕事で、朝から晩まで走り回っている。  学校を卒業したら、好きな仕事について、きちんと地上にある部屋に住みたいもんだ。  今現在は、友達の家の地下室で暮らしている。家賃はサービス。タダにしてくれてんのは大いに助かるけど、窓は無く、家具もほとんど無い。近所のじいちゃんに、いらなくなったテーブルを貰い、学校の友達に、使わなくなった椅子と電気スタンドを貰っただけ。  ベットは今のところゲットできてないが、もうすぐ手に入る予定だ。服はある事情から、俺に合わないサイズばっかり大量に集まって、実は少し困ってる。俺は、すごいのっぽなんだけど、服が小さいと、その効果でよけいに背が高く見えちゃうんだな。  靴は服ほど集まらず、一足しかない。靴だけは、サイズが合わないとどうしようもないからさ。俺の靴は、かかとに大穴が開いてるし、つま先が剥がれてきてる。でも、バラバラに空中分解する所までには至ってないから、まだ、なんとかイケルだろ。  余計な物を買う事はできない。優先順位ははっきりしてる。一位、学費。二位、食べ物。おしまい。三位、四位と続けたくても、続けられない。そこまで金が無いからな。わかりやすいシンプル生活だろ?  何も無いのは、ホープ島での子供時代も一緒だったから、あんまり気にならない。それに、俺がすごく困ってると思い込んだ友達や仕事仲間や、町の人達のお陰で、実は大して困ってないんだ。  何もかも貸してくれる。不用品も、あれば全部、俺の所に持ち込まれる。服のサイズがバラバラなのはお古だからで、みんなちょっと親切すぎるかもな。ノートや本、ペンみたいな小さな物はもちろん、風呂や電気といった、常識では貸し借りできなそうな物まで、誰かが毎日「貸して」くれる。  俺はみんなが好きだし、親切がとっても嬉しいから、遠慮せずに何でも貰う。未来のどこかでお返しできたらいいなと思うけど、それも大して気にしてない。俺は今、やるべき事だけで頭が一杯、精一杯だ。  まずうんと勉強しなくちゃな。したいと思う仕事があるんだけど、結構はば広い知識が必要らしいんだ。学校でなくても身にはつくだろうけど、やっぱり学校に行けるなら、そこで勉強するのが早道ってもんだろ。
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