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[サイクロン]
この子は、何を食ってんだろうな。同じ物を食べようかな。
[俺]
お前、死ぬぞ。
[サイクロン]
シッ、静かに!
この子、今、お尻を振ったぜ、見たろ?
何かすんのかも。ハエになるのかも。
ダメだ、こりゃ。
幼馴染みってのは、時には本当に厄介だ。俺は、こいつが本気で三日間、ウジ虫と共同生活するだろうことを、知っている。わかっている以上、ほっとけない。
[俺]
わかった、わかった。
とにかく、お前、泥なんか食うなよ。
何か食べ物、探してきてやる。ちょっとだけ待ってろ。
[サイクロン]
コケなら食べても大丈夫じゃね?
でも、まあ頼むよ。
俺、目が離せないから。
[俺]
ああ・・・せいぜい、その、頑張ってくれ。
すぐ、戻ってくるから。
[サイクロン]
しっ、静かに。
今、この子、何か言ったような・・・。鳴き声、出したみたいだぞ。
ク―、面白いなあ。
面白いのは、お前の方だ。ウジが鳴くかよ。
しかし、どうしたもんか。
スワンプを離れ、ロトン・アレー(腐敗路地)に入りながら、俺は頭を悩ませていた。
わずかでも、食い物が残ってりゃいいんだが、その望みは少ない。
まあ、サイクロンは、あんまり好き嫌いがない方だし、特に今は、何を食わせたところで味もわかりゃしないだろうが、さすがに空気を食ってるだけじゃ、この先、体がもたないだろう。
そこで、俺自身も、何一つ食ってないことを思い出した。ヤレヤレ・・・。
やるせない気持ちでフラフラ、力なく歩いていたら、暗やみ団地の巨大な影の中、誰かが一人、そこに立っているのに気がついた。
エッグだ。暗くて顔はよく見えなくても、立ち姿ですぐわかる。
腕を組み、片ヒザを少し曲げて、団地の壁に寄りかかっている。静かな力強い落ち着き。
間違いなく、それがエッグだ。
俺が気付くと同時に、エッグは体をずらして影から出た。夕闇の、薄れゆく紅色のわずかな光に身をさらして。微かな、優しい微笑を浮かべて。
[俺]
どうしたんだ、エッグ。そんな所で。
暗やみ団地でも、夕メシ時だろ。
[エッグ]
君を待っていたんだよ、マッシュ。
サイクロンを探しに出ているんだろう、そう思ってね。
[俺]
あいつ、ウジの成長を見守る為に、三日間、お守りするつもりらしいぜ。
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