ヘルズ・スクエアの子供達~パートⅡ~マッシュのお話

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[サイクロン] この子は、何を食ってんだろうな。同じ物を食べようかな。 [俺]  お前、死ぬぞ。 [サイクロン]  シッ、静かに!  この子、今、お尻を振ったぜ、見たろ?  何かすんのかも。ハエになるのかも。 ダメだ、こりゃ。  幼馴染みってのは、時には本当に厄介だ。俺は、こいつが本気で三日間、ウジ虫と共同生活するだろうことを、知っている。わかっている以上、ほっとけない。 [俺]  わかった、わかった。  とにかく、お前、泥なんか食うなよ。  何か食べ物、探してきてやる。ちょっとだけ待ってろ。 [サイクロン]  コケなら食べても大丈夫じゃね?  でも、まあ頼むよ。  俺、目が離せないから。 [俺]  ああ・・・せいぜい、その、頑張ってくれ。  すぐ、戻ってくるから。 [サイクロン]  しっ、静かに。  今、この子、何か言ったような・・・。鳴き声、出したみたいだぞ。  ク―、面白いなあ。  面白いのは、お前の方だ。ウジが鳴くかよ。  しかし、どうしたもんか。  スワンプを離れ、ロトン・アレー(腐敗路地)に入りながら、俺は頭を悩ませていた。  わずかでも、食い物が残ってりゃいいんだが、その望みは少ない。  まあ、サイクロンは、あんまり好き嫌いがない方だし、特に今は、何を食わせたところで味もわかりゃしないだろうが、さすがに空気を食ってるだけじゃ、この先、体がもたないだろう。  そこで、俺自身も、何一つ食ってないことを思い出した。ヤレヤレ・・・。  やるせない気持ちでフラフラ、力なく歩いていたら、暗やみ団地の巨大な影の中、誰かが一人、そこに立っているのに気がついた。  エッグだ。暗くて顔はよく見えなくても、立ち姿ですぐわかる。  腕を組み、片ヒザを少し曲げて、団地の壁に寄りかかっている。静かな力強い落ち着き。  間違いなく、それがエッグだ。  俺が気付くと同時に、エッグは体をずらして影から出た。夕闇の、薄れゆく紅色のわずかな光に身をさらして。微かな、優しい微笑を浮かべて。 [俺]  どうしたんだ、エッグ。そんな所で。  暗やみ団地でも、夕メシ時だろ。 [エッグ]  君を待っていたんだよ、マッシュ。  サイクロンを探しに出ているんだろう、そう思ってね。 [俺]  あいつ、ウジの成長を見守る為に、三日間、お守りするつもりらしいぜ。
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