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サイクロンは話し続け、俺は(なぜか)、夢中になって聞き入ってしまった。
途中、どうにも目が見えにくくなったなと思ったら、夜になってたくらいだ。
サイクロンはボタンランプに火をつけ、それから更に一時間、俺は、ウジ虫の人生についての考察を、じっくりたっぷり聞かされた。
正直に言うと・・・実は楽しかったんだ。本当に面白かった。
これが、サイクロンなのさ。巻き込まれちまう。どうしてこんなものを?と思うような事に目を向ける、不思議なヤツ。
サイクロンは、何が何でもウジ虫と一緒に寝るといって聞かないから、俺はチェリーに頼んで毛布を持ってきてもらった。彼女は、使い物にならなくなっても、ちっとも惜しくないようなオンボロズタズタ毛布を選んで、グリーンタンと一緒に運んできた。ちゃんと二枚。さすが、よくわかってる。
二人はすぐに悲しみ団地に帰らせたけど、俺はどうしても、サイクロンを一人残しては帰れなかった。結局、二人で野宿するハメになったんだ。
辛かったかって?そりゃまあ・・・ホープ島特有のものすごい湿気と、一晩中、降ったり止んだりする霧雨には参ったけどさ。寒くはない夜だったし、なかなかいい感じだった。ステキな夜だった。
パンの耳にピクルスを添えてかじりながら、クスクス笑い合っていると、キャンプしているみたいでさ。サイクロンと二人、幼い頃に戻ったような気がしたもんだ。
なんなら、三、四日、ずっとこうしていても良かったんだけど、まあ、色々とやらなきゃいけない事もある。
朝日が差すのと同時に、俺はウジ虫ちゃんとサイクロンをその場に残し、仕事に出かけた。
ヘル・マーケットの仕事(ゴミ漁りともいう)が、人手不足だったんだ。ヘブン・スクエアの住民が捨てたゴミの山から、使える物、食べられる物を見つけ出すのが、ヘルズ・スクエアの子供達の仕事。でも、ここ数日は欠勤が増えるだろうって、ピーウィから報告が来た。
クリスタルは熱を出し、ピーチは下痢に嘔吐、ハッピーベビーは捻挫。
いつもなら、怪我人の世話はクレイジー・グランマがしてくれるんだけど。ばあちゃん、腰を痛めちまったんだ。
だもんで、三人の看病は、まるで当然のようにエッグに降りかかってきて、あいつは悲しみ団地の「病室」に缶詰めになった。
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