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「はじめまして、(かけい)夏樹(なつき)といいます」  柔らかな表情と、温かな声。それが、俺たちの出会いだった。三歳だった俺は、その初対面を、なぜか今でも鮮明に覚えている。  十七歳になった今、その頃の記憶なんてほとんど薄れているが、その日の事だけはなぜか覚えている。それは、そいつがとても何かを耐えたような、複雑な顔をしていたから。 「(あきら)さん。脱いだ制服はきちんと掛けなさいと、いつも言ってるでしょう。それくらい、ご自分でやってください」 「あーあーあー、うっさいなー。筧はほんと、口うるさい!」  さすがに制服のままベッドにあがるのは躊躇って、制服を脱ぎ去ってルームウエアに着替えてからベッドにダイブした。ごろごろしていた俺に、小言をねちねちと投げつけてくるのが、俺の教育係兼世話係の筧夏樹だ。 「でしたら、明日はシワシワになった制服で、どうぞ登校してくださいね」 「・・・・・・わかったよ! やりゃいいんだろ! やりゃあ!」  夏樹ならやりかねない。苛立ちながら起き上り、脱ぎ捨てた制服を拾い上げるとハンガーにかけ、ラックにかけた。  それを見て満足そうにほほ笑み、食事の用が出来たら呼びます、と部屋を出て行った夏樹の後姿を見て、ため息を吐く。
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