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「俺は、瑛の頑張ってる姿を側で見ているのも好きだけど」
「・・・・・・ワタワタしてるのかっこ悪いだろ」
「そうかな。一生懸命努力してるの知ってるし、そんな風には思わないけど」
「息子ってだけで今の地位があるって思われたくない。確かにそうなんだけど、間違いじゃないんだけど」
「雄三さんは、いくら息子だからといって、実力がなければ今の地位をこんなに早く与えないと思いますよ。そのことを、ちゃんとわかっている人もいます」
でも、時折そのプレッシャーに押しつぶされそうになる。俺がまだ若造で、社会に出て行く年も経っていない若輩者だということは確かで。いくら努力したって、傍から見て見えるのは年齢だったり、社長の息子っていう肩書だったり。
――社長の息子って、楽でいいなー
いつしか、そんな風に言われたことだってあった。将来安泰で、楽していい地位にのし上がれるんだから。と。
傍から見れば、そう見えるのだろうと。確かに、間違ってはいないが、努力を何一つしてこなかったわけじゃない。
ならば、十年先、それ以上先、歳を重ねたのちにその地位に就いたとして、そんな事を言われないかといえば、きっとそうじゃない。それならそれで、同じように言われるだけなのだ。社長の息子だからと。
ならば足掻くしかない。バカにされないほどの知識と、知恵と、人脈を作り、懸命に足掻くしかないのだ。
「父親が偉大すぎると、本当に苦労する」
そう言った俺に、夏樹は小さく笑った。
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