541人が本棚に入れています
本棚に追加
土曜の夜。久しぶりにプライベート用のスマホを震わせたのは、正樹からの着信だった。
「よお、元気か」
『元気元気。瑛くんは?』
「ああ、なんとかやってる」
元気元気といっているが、電話口から聞こえる声は少し疲れていた。今、正樹は研修医として大学病院で働いている。一人前になる道のりは険しいのだと、漏らしていたのは前回の電話の時だったか。
『専務になったんだっけ。すごいね。でも、それだけ責任もあるし、大変そうだ』
「プレッシャーに押しつぶされそうだ。お前も、研修大変なんだろ?」
『体力的にも結構来るね。でも、患者さんが病気を治してさ退院する時に見る笑顔が印象的で、頑張ろうって思えるんだよね』
「そうか。正樹は医者に向いてるんだろうな」
『どうなんだろう。そうだといいけど、凹むことも多くてさ』
命を扱う現場なのだ。きっといいことばかりではないだろう。責任の重さ、命の重さに向き合っていかないといけないのだから。正樹の話を聞いていると、俺がくよくよとしているのが馬鹿らしくなるほど自分の悩みがちっぽけに思える。
俺も、もっと頑張らないとって励まされる。
最初のコメントを投稿しよう!