君が好き

１１

　だから、周りは皆、俺が跡継ぎだとか次期社長だとかいうけど、それは結局は俺の努力次第なのだ。父はまだ若く、これからもバリバリと働けるだろう。そう易々とその地位を明け渡しはしないだろうし。

「そういうことを、もっと早くいってやればよかったと思っていたんだけどな。俺の後を継いでほしいという親の欲目が瑛を縛ってしまっただろうと気を揉んでいた」
「え？」
「そうすれば、もっと他に瑛のやりたいことを選択する余地もあったかもしれないと。瑛は、俺の跡を継ぐために、決められたレールの上を歩いてきた感覚だろうと思ってね」

　どう反応すればいいかわからなかった。少なくともそう感じたことがあるのは確かで。だからこそ、夢を持って頑張る正樹が眩しくて羨ましいと感じた事もある。

「でも･･････父さんの跡を継ぐことを嫌だと思ったことは一度もない」
「そう言ってくれる優しい瑛が、大好きだ」

　真っ直ぐ向けられる愛情。その想いを噛みしめながら大事なことを告げようと息を吸った。そこで、父さんの口から衝撃的な言葉が発せられた。

「一生を考えるほど、夏樹君の事が大好きなのか。父親としては、寂しいものだね」