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時が止まったかと思った。今、なんて。父さんは、なんて言ったか。
「え?」
「瑛が夏樹君を好きなことくらい、父親なんだからわかる。片思いだろうと思っていたんだけど、今年に入ってそろそろ夏樹君を瑛の秘書にと思って夏樹君と話をした時に、言われたんだ」
「な、なにを」
「瑛に昔告白を受けたのだと。そして、自分もその想いに応えたいと思っているのだと。瑛にそんな思いを抱いている俺を、戻すのが嫌だというのならここできっぱりと切り捨ててほしい、と。受け入れるなら、自分たちの事を認めてほしい、と」
開いた口が塞がらないとはこの事だ。まさか先手を打たれていたなんて。しかも、そんな時から。その時には、俺の気持ちがどう変わってるかなんてわからない状態だったはずなのに。確信でもあったのだろうか。いまだに俺が夏樹の事を好きだって。それとも、そうじゃなくても振り向かせる自信があったのか。どちらにしても、いつだって俺は夏樹にしてやられる。
しかも、父さんも、知っていて夏樹を受け入れて、知らん顔して俺たちの事を見守ってたなんて、人が悪すぎる。
「父さんは、それで受け入れたんだ・・・・・・」
「仕事柄、いろいろな人に出会ったからね。それに俺は、瑛が幸せならいいって考えてるから。瑛は今、幸せか?」
「・・・・・・うん。今まで生きてきた中で一番幸せ」
「そうか。なら何も問題はないな」
偉大すぎる父に、俺は一生敵わない気がする。偉大で寛大で愛情深い最強の父親だ。
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