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「そうなんだ。瑛くんは、将来お父さんのホテルを継ぐんでしょ?」
「・・・・・・まぁ、たぶん」
「経営者、なんて大変そうだよね。八幡リゾートって言ったら、超有名な高級ホテルだし」
「別に。そこに辿りつく道筋はできてんだから、大変なんかじゃねぇよ。それより、医者になるっていうお前の方が大変だろ」
引っ張られるようにして足を動かされている俺と、自らの意志で足を進めていかないといけない正樹とでは、違うだろう。
「瑛くんは、優しいね」
「はあ? どこが」
「そうやって、僕の事認めてくれるんだもん」
「だもんって・・・・・・」
認めるっつぅか。眩しいんだよ。夢ってもんをしっかりと手にしていて、そこに向かって直向に頑張ろうとしている正樹が。眩しくて仕方ない。気の弱そうな、ふにゃけた奴に見えるのに、めちゃくちゃかっこいいって思ってしまう。
俺にはないものを持っている。それがきっと、羨ましいんだ。
正樹はきっと、何者にでもなれる。例えば、ふと心変わりをしたとして、医者じゃない別の何かにだってなれる。正樹がしている努力は、全部自分のためで。だから力強くてかっこよくて、輝かしく見えるのだ。
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