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 俺に、どうして教育係兼世話係なんてものがついているかっていうと、一応御曹司ってやつだからだ。  俺の父親は、大手ホテルチェーンの「八幡(やはた)リゾート」の社長を務めている。いずれは、その跡を俺が継ぐって話だから、大学もそういう経営が学べるところに行く予定だ。だからこそ、高校までが自分の自由になる時間だっていうのに、夏樹の奴があれこれつべこべ言ってくれるもんだから、毎日イライラの積み重ね。  夏樹は本当に、厳しくて、優しくない。話し方はめちゃくちゃ丁寧で優しいのに、有無を言わせぬ迫力があるというか。 「なんで俺、あんな奴の事好きなんだろ」  ポツリと独り言つ。  そう。俺は、口うるさい教育係に、目下片思い中である。  気づけばそうだった。でも、一度もそれを告げてはいない。夏樹は、俺の側にずっといてくれているが、それは仕事だからだ。父に命じられて、そうしているだけだ。  わかっているから、好きだ、なんて言えるわけない。言ったら最後、夏樹は俺から離れていってしまうかもしれない。  夏樹は、俺が三歳の頃から、この家にいる。事情は詳しく聞いていないし、昔軽く聞いた際には、住み込みで働いてるんだと答えた。だが、俺が初めて会った三歳の頃は、今から計算すると今の俺くらいの歳で、十八歳くらいだ。夏樹は大学もいっていたから、その頃から住み込みでってことなのか、よくわからない所だ。そこら辺は、俺には関係ないことでもあるため、深く聞いてもいないし知らなくても問題はない。
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