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ベッドに転がっていると、いつの間にか寝落ちしていたらしく目を覚ましたのは、控えめなノックの音が聞こえたからだ。ぼんやりと目を開き、ふあ、と欠伸を一つ吐き出す。
「瑛さん、食事の用意ができました」
「んー」
扉の向こうから聞こえる夏樹の声に身体を起こすと、フラフラと歩み寄り扉を開く。
「眠っておられたんですか」
「ん。今起きた」
「夜眠れなくなっても知りませんよ」
「はいはい。お前は俺のかーちゃんかよ」
口煩い夏樹は、本当にそんな感じだ。母ちゃんってのがどんなもんなのか、俺は知らないけど。
俺の母親は、俺を生んですぐに病気で死んだ。だから、俺には母親の記憶がない。
「かーちゃんでも、とーちゃんでも構いませんが、だったら少しは言う事を聞いてください」
「反抗期だよ。糞ババァ、とか言っちゃうかもね」
「勘弁してください」
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