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 夏樹は、俺よりも十五も上だというのに、俺に対して敬語を使う。丁寧な言葉を使う所しか見たことがないから、もともとそうなのかもしれない。誰に対しても丁寧な言葉遣いだ。でも、それは俺が近くにいるときはいつだって仕事中だからなのかもしれなくて。友人とかの前じゃ、もっと砕けた話し方なのかなとか考える。  でも、俺が夏樹といる十五年、夏樹の友人には会った事がない。夏樹のプライベートは、全く未知だ。  夏樹にもきちんと休みが設定されてある。その日は、夏樹が暮らす離れにいるのか、姿を見せない。詰まる所、俺はやっぱり、仕事だから関わっているという事になるのだろう。 「社長は、今日も遅くなるようです」 「いつもの事だろ。いちいち報告いらないよ。別に、待ってなんてないし」  食事の席に着くと、わざわざそんな報告をくれる夏樹にムッとして返す。夕食の時間に間に合った事なんて、いつだってないじゃないか。それなら、いちいち毎日毎日同じ言葉を繰り返す必要なんてない。もし万が一、食事がとれるってなら、その時に報告してくれたらいいのだ。  むしろ、その方がありがたみがある。  期待なんてしていない。別に、一人の食事なんて慣れているのだから。それに、高校生にもなって今更、寂しいなんて言うはずないじゃないか。
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