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「もったいないことをしてはいけません。残さずお食べください」
「いらないって。俺が嫌いなの知ってるんだから出さなきゃいいだろ! そしたらもったいないことにならないんだから」
嫌いな事知っててわざと出すんだから、そんな事、知ったこっちゃない。
「なんでも食べないと大きくなれませんよ」
「ブロッコリー一つ食べないくらいで変わらないよ」
「まったく、ああ言えばこう言う。ほら、食べてください。あ―ん」
そう言って、フォークを拾い、ブロッコリーに突き刺すと俺の口に向かって差し出す。あーんって、子どもじゃないんだから。そう思いつつ、夏樹に向けられたフォークに内心ドキドキしていた。
大っ嫌いなブロッコリー。でも、それを向けているのは夏樹だ。それは、ものすごく魅力的なものに見えた。なんてマジックだ。おずおずと開いた口に、隙ありと如くブロッコリーを突っ込まれる。口に入ったブロッコリーは、やっぱり俺の嫌いなブロッコリーのままだった。
「うえっ、最悪」
どうにか咀嚼して飲みこむけど、本当に苦しくて、涙目になる。俺だって、マヨネーズを見えなくなるくらいにかけてくれたら食べられなくもないのに、かけすぎは体に悪いってそれさえも許可してもらえない。マヨネーズを食べているのか、ブロッコリーを食べているのかわからないくらいじゃないと、味が嫌いなんだからダメなんだ。
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