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現代の神隠し
昔から、「神隠し」に遭いやすい子どもがいると、民俗学者の柳田國男は言いました。
気づくと《遠くまで歩いてしまう子ども》だそうです。
夕暮れになると自分がどこまで来てしまったのか分からなくなるほど、無意識のまま、どこまでも歩いてしまう子どもがいるそうです。
柳田自身もそのようなタイプの子どもだったと文献に残しています。
柳田の場合、神のふところに仕舞われることなく、現世に戻ってこられた子どもでしたが、二度とは戻ってこられなかった子どもがたくさんいたのです。
今、もう神隠しはなくなったのでしょうか?
知人の事件記者は言いました。
「意識のないまま歩いている人がいる」
病気ではなく、意識を失っているでもなく、ただ、意識のないまま歩いている人が街には結構な数、いるというのです。
現代の神隠しとでも言うような誘拐事件が起こっています。
クレジットカードの普及時には、借金を抱えた女性が多く姿を消しました。
もちろん、男性もそうです。
東京湾に沈んでいるでもなく、山に埋まっているでもなく、
忽然と姿を消した人間はどこにいるのでしょう。
《意識のないまま歩いている人》というのは比喩です。
とてもいい得ていると思いました。
ほとんど無意識のまま、目の前に出てくることに飛び込んでしまう人。
現代の《意識のないまま歩いている人》は、一体どこまで歩いていってしまうのでしょうか。
短いエピソードをお話したいと思います。
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