彼女と焚火と塩化ビニルの落ち葉

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「はぁ…やっと終わった。」 日頃の運動不足が祟って、大したことをやったわけでもないのに、身体中が痛い。この分だと明日は筋肉痛だろう。 「これだから落葉樹は…」 流石の彼女も肉体労働はあまり得意では無いらしい。 良い事を思い付いた。 「折角だからそこらで焚き火でもしていきません?」 最初からこれが目当てで落葉を掃除していたわけでは無い。思いつきである。 「先輩、落葉は可燃ごみなので私たちが燃やさなくともいずれ誰かが燃やしますよ?」 身も蓋もない 「いや、そうじゃなくてだね…」 「落葉って塩化ビニルか何かでしたっけ?」 「いや違うけどね…」 取りつく島もないとはこの事である。 「…人が落葉を燃やす時、そこには、何かしら意味があります。例えば、一昔前の日本ならば、そこで燃してしまえば、焼却炉までわざわざ持っていく手間が省ける上に、暖もとれると、一石二鳥だったわけです。しかし現代日本でそんなことをする必要性は見当たりません。では、先輩は何を思って焚き火をしようと言ったのでしょうか?」 わざとらしく質問形で終わらせて、こちらに視線を向ける。 なるほど… 「……じゃあ、もう少し君と話していたいから、向こうで朽葉でも燃焼させて時間を潰しませんか?」 風が吹き、集めた落葉が少し、吹き飛ばされる。 「喜んで」 そう笑って答えた彼女の顔は、沈み行く夕日のせいか少し赤くなっている様な気がした。 季節はもう、冬である。
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