はじめに

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はじめに

○はじめに エブリスタをご覧の読者諸氏よ、 お初にお目にかかる。 我は崔浩(さいこう)と申す。 作者が知ったかぶりを講じたい時に 我を引きずり出して、ドヤ顔で語る、 その人身御供のようなものである。 まったく、我も暇ではないのだがな。 まぁ、我のことはよい。 このたび、作者の家に妙な本が届いた。 「素女経(そじょきょう)」入門。 「カーマスートラ」「匂いの園」と並び、 房中術(ぼうちゅうじゅつ)、いわゆるセックスハウツー本の 大古典とされる「素女経」について、 まとめられた本……だ、そうである。 一方、作者の家には、 一冊の本が積まれていた。 カーマスートラ。 ……活かされてますか? ○本作の目的 作者はいう。 「ば、ばばば馬ァッ鹿、  モノカキってのぁなあ、  知識と妄想で戦うもんだろう?」 なるほど。 それで今回、素女経ベースで、 そこにカーマスートラの内容を合流、 伝統的房中術の姿を見てみよう、 となったのであるな。 相変わらずノリと勢いと発作に 支配されておるようで、何よりである。 なお、原文の分量は、 カーマスートラのほうが圧倒的に上である。 にも関わらず、素女経ベース。 ここには重大な理由がある――という。 「カーマスートラの、  今にも踊りだしそうなあのノリが、  正直、キツい。  あと原文訳すのむり」 インド人に上にされてしまえ。 ○素女経について 成立は(かん)代以前。 中国の伝説的な王「黄帝(こうてい)」が、 ここ最近の元気を失った の様子を受け、 性の指南役たる「素女(そじょ)」より 教えを乞う、と言うスタンスである。 この本は唐書(とうじょ)新本旧本にその名が乗るも、 まとまった本文は、中国本土では しばらく失われておったそうである。 どこにあったかというと、日本。 平安時代の医者「丹波康頼(たんばのやすより)」がまとめた、 「医心方(いしんぽう)」という書物に多くの中国由来の 医学書が引用されており、この中より、 房中術にまつわる内容を 中国(しん)代の学者「葉徳輝(ようとくき)」が 文献ごとに分類、再現を試みた。 このためどうしても欠落の難を 回避しきれてはおらぬのだが、 それでもなお、房中術知識のオリジンとして 重要なポジションにある、と言える。 なお、素女経を抽出、紹介したものは 「雙梅景闇叢書(そうばいけいあんそうしょ)」と呼ばれ、 そこには他の房中術書の 内容も掲載されておる。 のだが、当講座では省く。 素女経以外の本は、 基本後代のものとされている。 ここでは、同じく房中術のオリジンである カーマスートラとの比較により、 最もシンプルなところを 並行参照してみよう、と試みる次第である。 ○カーマスートラについて ハウツーセックスの代名詞的存在、 それがカーマスートラであろう。 実は、タイトルを乱暴に日本語訳すると、 やはり「より良い性生活のしかた」 的に申し上げられる。 古代インド。未知の世界である。 が、その謎の国では、人生の運営に 三つの柱がある、と説いた。 法=ダルマ、 利=アルタ、 性=カーマ、 である。 より良き人生を送るに当たり、 必須のものの質を高めるために カーマスートラは存在した、と言える。 と言うわけで「スートラ」については 「マニュアル」くらいに 捉えていただくとよい。 あと来歴追うのむり。 一応著者はヴァーツヤーヤナとされるが、 あいつら文書もガンガン建て増しして、 しかもそこに史料批判を加える気はないので (その代わり、順序等は極めて理性的) 原典がどう現在の形に落ち着いたのかが、 さっぱり追跡できぬ。 同書は、その名ばかりが先行し、 そこには謎のウルトラ秘奥義が 掲載されていると思われがちだが (※往時の作者のことである) 目次を見ると「よりを戻す方法」 なる一項が見えるなど、 いわゆる房中術の範疇に収まらぬ、 かなり広範な内容に渡っている。 当講座にては、 その見出しをこそ紹介するものの、 素女経の内容に被らぬ部分については 基本的には紹介を省略する。 ご了承いただきたい。 ○参考資料 原文:wikisource「素女経」 https://zh.wikisource.org/wiki/%E7%B4%A0%E5%A5%B3%E7%B6%93 岡本隆三(おかもとりゅうぞう)「素女経入門」青春出版社 1973 葉徳輝/伊吹浄(いぶきじょう)「雙梅景闇叢書」公論社 1983 土屋英明「中国の性愛術」 2008、2018 ※「医心方」の記述として書かれている。  そのため記述の内容に  「素女経」が含まれる形式である。 https://www.amazon.co.jp/%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E3%81%AE%E6%80%A7%E6%84%9B%E8%A1%93-%E5%9C%9F%E5%B1%8B%E8%8B%B1%E6%98%8E-ebook/dp/B079QDXJ6G 原文:wikisource「kamasutra」 https://en.wikisource.org/wiki/Kama_Sutra 原文:wikisource「कामसूत्रम्」 https://sa.m.wikisource.org/wiki/%E0%A4%95%E0%A4%BE%E0%A4%AE%E0%A4%B8%E0%A5%82%E0%A4%A4%E0%A5%8D%E0%A4%B0%E0%A4%AE%E0%A5%8D ヴァーツヤーヤナ/岩本裕(いわもとゆたか) 「完訳 カーマスートラ」平凡社東洋文庫 1998 ヴァーツヤーヤナ/大場政史 「カーマスートラ」 グーテンベルク21 2012 https://www.amazon.co.jp/%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%83%BB%E3%82%B9%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%A9-%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%83%BC%E3%83%84%E3%83%A4%E3%83%BC%E3%83%A4%E3%83%8A-ebook/dp/B00AQRYM42
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