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至理6 「開戦」準備
○素女経 至理6
《素女經》は云えらく:黃帝は曰く:「夫れ陰陽交接の節度たるは、奈何んぞを為さんか?」と。素女は曰く:「交接の道にては、故より形狀有らば、男の不衰なるべくを致し、女は百病を除き、心に娛樂を意え、氣力を強むるなり。然して知り行わざらば、漸く以て衰損す。其の道を知らんと欲し、氣を定め、心を安んじ、志を和すに在すべし。三なる氣の皆な至らば、神は明なるに統歸し、寒ぜず熱せず、饑えず飽ぜず、身を寧んじ體を定め、性は必ずや舒遲し、淺き內にて徐々に動き、出し入れは希なるを欲す。女の快なるを意わば、男が盛んなるは衰えず。此を以て節と為すべし」と。
セックスを、どのように行うのが良いのか。
より身体が充実するための、ともなれば、
事前準備が必要である。
男は萎えないようトレーニングする。
女は健康体であることを保つ。
両者のこの条件が整わねば、
お互いが消耗してゆくだけである。
この条件を整えられて、初めて
お互いの活力が満ち満ちる。
向かい合った両者が、
・気持ちを落ち着ける
・心を平らかとする
・精神を和やかにする
この三要点を心に秘め、
いざ、ドッキングである。
この時両者は暑さや寒さ、
空腹や満腹など、不快な感覚より
解き放たれ、のびやかなるセックスが叶う。
さて、実際にドッキングしたならば、
その後はいかに振る舞うべきであろうか。
ゆっくりと、はじめは浅めに進入。
やがて、突き入れる。
出し入れは少ない方がよい。
さすれば女の身に快感が走り、
男も衰えずに済むであろう。
これが、お互いの身を全うする
セックスの要諦である。
○カーマ・スートラ2-2,2-3
うむ。合体に先んじて心を落ち着け、
ゆったりとした気持ちでなせとは、
実に中国的であるが、
盛り上がりに欠けるな。
よってカーマ・スートラにある
合体の前段階のやり取り二種、
すなわち「抱擁」「接吻」を紹介いたそう。
すごいぞ。
恐ろしく充実しておる。
この辺りには、趣を増すために
原語もあわせて
探っておきたいものであるな。
・抱擁(通常時)
1:接触抱擁
未だはっきりとお互いの意思の
確認が取れていないときに為される。
要はただ触れるだけ、
ものを取ろうとして手が重なる。
あの辺りを意図的になし、
意識をこちらに向けさせる。
2:貫通抱擁
うっかり転びかけてしまったな!
おおっと、ぶつかった拍子に
女の胸が男にあたってしまったな!
男としても、女を助けるために
抱きとめるしかないな!
事故だし仕方ないな!
3:摩擦抱擁
以下はもう愛し合っている
人間たちがやるものである。
人が密集しているところ、
あるいは人のいないところで、
お互いの体をさすり合うのである。
4:圧迫抱擁
摩擦抱擁をなす際に、
壁や柱と自分の身体で、
相手をサンドイッチにする。
より激しく行えるというアレである。
・抱擁(セックス時)
1:つる草のまとわり
=Jataveshtitaka(ジャタ・ヴェシュティタカ)
お互いに立った状態。
つる草が絡むようにまとわりつき、
お互いを見つめ合う。
2:木登り
=Vrikshadhirudhaka(ヴリクシャ・ディールダーカ)
お互いに立った状態。
男の身体を木の如く見立て、
そこに「よじのぼる」。
これはこれは。また……。
3:ゴマと米
=Tila-Tandulaka(ティラ・タンドゥラーカ)
横になった状態。
腕と足とを絡ませ合い、密着する。
4:牛乳と水
=Kshiraniraka(クシラニラカ)
男が座ったところに女が腰掛け、
ぐいぐいと体を押し付ける。
あるいはお互いが横の状態で、
融合でもせんかと言う勢いで
お互いの身を押し付け合う。
5:太もも抱擁
相手の太ももを、
こちらの太ももでぎゅっと
挟み込む。
6:陰部抱擁
陰部同士を接触させ、
キスや噛みつき、愛打などを為す。
7:胸部抱擁
横になった男の上に女が乗り、
男の胸に女の胸をのしかからせる。
8:前頭部抱擁
目と目、口と口を合わせながら、
額を密着させる。
・接吻
抱擁及び接吻は
情欲亢進の手段として書かれている。
ただし、注意せよ。
女の情欲は徐々に盛り上がる。
そこをわきまえず、いきなり
ガツガツ行くとドン引きされよう。
あくまで女の情欲の亢進に従い、
頻度、激しさを増すように。
為すと良いとされる箇所は
額、髪、頬、目、胸、
乳、唇、及び口中。
こちらにも様々な種類がある。
・接吻のいろいろ
1:慎重な接吻
初めての紂、である。
ひどい誤変換すぎてついそのままにした。
恐る恐る、触れるだけの接吻。
2:痙攣する接吻
情熱的に合わされた男の唇を、
何とか頑張って迎え入れようとする女の
頑張る姿。なんだそのご褒美は。
3:押し付ける接吻
接吻の時、お互いの目を閉じ、
その下唇をくわえ、舌を押し付ける。
4:同位接吻、斜接吻、揺動接吻、圧迫接吻
詳細不明。
まぁ、位置関係、強さ的なものであろう。
5:締め付ける接吻
一度指で女の唇を挟んだ後、
そこを男の唇でくわえ込む。
何故斯様な発想に至るのか。
6:上部接吻
女から男に接吻する時は、
上の唇にめがけ接吻すると良い。
7:環状接吻
相手の両唇をくわえ込む接吻。
基本的にやる方が上位者である。
うぶな男に仕掛けてやれば
男はメロメロであろう。
・深く愛しあう二人の接吻遊戯
接吻をする際、どちらが先に
下唇をくわえられるかを争う遊戯。
男がまどろんでいる時には、
女からこの遊戯を仕掛け、
様々に挑発してやると良い。
いきおい、気分も盛り上がろう。
・象徴的な接吻
1:情熱の点火
眠っている男の唇に、
女が「ただ自分の気持ちのために」
接吻するもの。
2:激励接吻
男が女以外の者に夢中になっている時、
こちらに気を引かんが為に為す接吻。
3:覚醒接吻
男が眠っている女に向け、
「ただ自分の気持ちのために」
なす接吻。
ただし女は寝たふりをして、
男を待ち受けよ。
……なぜ女の側にのみ、
その注意書きがあるのだ。
4:意図の表象
鏡や水面に映った女の顔に、
あるいは女の似顔絵に対してする。
なんだそれは。
小学生のリコーダー舐め事件か。
似たようなものとしては、
好きな相手を前に
子供や肖像、彫像に接吻したり、
人前で相手の手、足などに接吻するのも
意図の表象である。
5:挑発的接吻
接吻するよ? しないよ? 的に
のらりくらりと唇同士の接吻をじらし、
近づいては離れ、
手や足などに接吻する。
その手では、相手を撫でさする。
これはこれは、何ともはや……。
○崔浩先生、曰く
なお、のちに出てくるが
素女経における接吻の扱いはすごい。
「女と唇を合わせ、
お互いの精気を交換せよ」
である。シンプルか。
もっとも、「精気の交換」は、
いきおい、両者の情の交換とも接続しよう。
その意味では
「端的な言葉に圧縮しています」
とも表現し得るやも知れぬ。
素女経は、医学の範疇の書である。
一方で、悦楽を語る性奥義書も、
或いは存在していたのであろう。
無論、儒教的道徳観を押し出す国では、
なかなか表立っては
流通しなかったであろうが。
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