40.嘘…?(2)

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40.嘘…?(2)

泣き出した智を抱きしめた。 悲しませたかったわけじゃないのに、泣かせてしまった。 櫻木之啓。 ただの甥だとか義理の息子だとか、そんな体裁ではなく、彼が智に愛情があったのは、実際の本人たちのやり取りを見て知っていた。 それに、もし、智が自分の子どもだったなら、認知するなり養子縁組するなり出来たはずだ。 だが、智はずっと「秋山」の姓のまま。 兄弟で何で名前が違うのかと聞いたら、和成は躊躇いもなく再婚した相手の連れてきた子どもなんだと言っていた。 その再婚相手は、母親の実の妹で、自分にとっては叔母になる。 だから、智とは血がつながっているんだと、彼は嬉しそうに説明していた。 そんな様子から智の事が大好きなんだと分かったし、翔さんに関しては疑いようもなかった。 だが… それが、当たっていたら、子どもたちに対する手ひどい裏切りじゃないのか。 もし、あの頃、彼が知ったら、どうなった…? とても親切で優しい先輩だったが、怒ると怖くて、激情に駆られる様子を見たことがあった。 そして、そのすべてに智が絡んでいた。 彼が智を愛していることなんて一目瞭然だったし、智も… … 彼を愛して、苦しんでいた。 お世話になっている人の息子さんだ。 恩のあるおとうさんを裏切れないと、悩んでいた。 義理とはいえ 兄弟なのにと… あの人は、そんな智がじれったかったに違いない。 やっと結ばれて幸せそうだった二人。 でも、もしも… それが事実で、彼がそれを知ったとしたら… 怒る…? だから二人はおかしくなったんじゃないのか…? 俺は智に、二人の間がおかしくなった原因を、未だに聞けないでいた。 『智…?』 俺の腕の中で段々と落ち着きを取り戻していた。 「何…?」 『…聞きたい事が…あるんだ。』 智は不思議そうに俺を見つめて俺の言葉を待っていた。 何ともないんだろうか…? 愛し合っていた相手の名前… 智の中では もう終わってるから…? 『はー。』 俺は気を落ち着かせるように息を吐いた。 『あの頃…櫻木先輩と何があったの…?』 その質問に、智は顔の色を失くした。
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