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42.新しい人生(1)
和成は翔を案内すると、かいつまんで仕事の内容を説明した。
翔は弟の仕事に興味深々で、部屋に入るなりくまなく辺りを見回す。
「こっちが共同経営者の南波 雅也。」
『南波です。』
<いつも弟がお世話になってます。>
翔は雅也に、そつなく笑顔で握手を求めて礼を述べていた。
それに引き替え、応えて手を出した雅也は少し複雑な表情をしていた。
「…。」
表情をこわばらせて黙った雅也に、翔は流石におかしいと思ったらしく、怪訝な表情を浮かべる。
「雅也は兄貴も良く知ってたし、仲良かったよ。」
『カズっ。』
<そうなのか…?>
『あ…。』
雅也は慌てながら、でも「まあ…」などと言って、誤魔化し気味に肯定していた。
<覚えてなくて悪いね。良かったら今度、飲みに行かないか…?
新しい友好関係なら自信あるんだ。>
『え…あの…その…。』
「「うん」って言っとけよ。兄貴の事 大好きなくせに、何、遠慮してんだよ。俺が付いて行くに決まってんだから。」
『カズっ!』
和成の言葉に、雅也はおかしいくらい狼狽えていた。
せっかく覚えていないのに、わざわざバラされてどうしたらいいかもわからない。
<はは…そうだな。和に付いてきてもらった方が助かるかな。>
だが、翔の方はあっさりと受け流していた。
穏やかな空気が流れる。
きっと翔の天性の技なんだろうと、誰もが感心する。
みんなの居心地良くなって、彼に付いて行きたくなるんだ。
まあ、癖が強いから本当に付いて行くなんて無理だけど…っと、彼をよく知る二人は同時に思っていた。
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昔、修学旅行に必要なモノをそろえようと、兄ちゃんたちが出かけたことがあった。
きっと一日では揃えきれないと思うからって、そんな話をしながら出かけて行った。
〔すごいんだよ翔くん。ちっとも休憩しないんだ。〕
『えっ!?…にいやん、しんどかったの?』
〔そんなじゃ、ないけど…。〕
「…さとにいちゃん、疲れたんだ。」
〔ん…ちょっとね。〕
『!!∑(゚Д゚)!』
「大丈夫だよ。ただ…翔くんのお友達は大変だなぁって思っただけ。 ふふっ。」
さと兄はそう言って翔兄に止めをさすと、殺人的に可愛い笑顔を見せていた。
可愛い…
笑顔を…
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