42.新しい人生(3)

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42.新しい人生(3)

さすがに和成は動揺する。 …? 「何だ…?」 『二人は会わないほうが良いんだよ。』 会わないことで、何か怖い事から逃げられるとでも言いたそうな言葉に、和成は引っ掛かりを覚える。 「…お前、何か隠してんのか…?」 『えっ。』 あからさまな動揺。 「雅也!」 和成は本気で雅也を睨んだ。 『…あーちゃんのことも好きでしょ…? 生きていて…欲しいんでしょ…?』 「何言ってる…?」 『カズは外国にいたから…知らないんだっ。…あーちゃん…自殺しようとしたことが…あった……よ。』 は…? 何言ってんだ…? 雅也の言ったことが、和成にはすぐには理解できず、馬鹿みたいにポカンとしてしまっていた。 「雅也…?」 『薬をさ…大量に飲んで…あのまま、俺が見つけなかったら………死んでたんだよっ。』 ! 「うそ…だ…。」 『嘘じゃない。きっと…翔ちゃんが悪いんだと思う。あーちゃんを…苦しめてた。』 「うそだ…あり得ない。どう言うつもりでそんなこと…翔兄は さと兄が死ぬほど好きだったんだぞっ。」 『知ってるよっ!」 雅也の悲痛ともとれる叫びに、和成は押し黙った。 「知ってるよ……だから、あっさり別れたんじゃないかっ。翔ちゃんは俺じゃあ幸せに出来ないって、そう思ったのに…。』 「…。」 『あーちゃんに「絶対に許さないっ」て言ってたのを聞いたんだ。はっきりとは理由がわからないけど、許さないって…。』 許さない…? 何の事だ…? 『あーちゃんを捜すのは止めよう。翔ちゃんの記憶が戻らないのは、きっと思い出したくないからだよっ。』 雅也はその時の事を思い出したのか、我慢しきれず本格的に泣きだした。 一体…、どういう事なんだ…? 苦しめてた…? 翔兄が、さと兄を…? そんな馬鹿な事…あるはずない。 なぜなら、翔が智に夢中だったのを、和成が一番そばで見ていたからだ。 そして、だからこそ、彼は諦めた。 兄には到底か敵わないと思ったから。 それで… それで、さと兄も本当に翔兄を愛してた。 和成は目の前で涙を流す雅也の告白に、茫然としたまま声も出ないでいた。
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