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45.悔恨
※41.追憶つづき…
俺たちが終わってしまったわけを優に話そう。
智はそう決意していた。
そして、新たに始めたいと思っていた。
「翔くんは俺を………………憎んでた…。」
!
智が予想した通り、優は驚いた顔をしていた。
憎む…?
一体何の話…?
だって…あの人が死ぬ程智にゾッコンだったのは知ってる。
だから仕方がないと思った。
温厚で真面目で優しい先輩。
爽やかで人気があった。
そんな彼が豹変するのは貴方が絡んだ時だけ。
あんなに智を愛していて智も彼を愛していた。
俺が付け込む隙なんてなかった。
あの頃は、櫻木翔という人間を、死ぬほど羨ましいと思っていたし、今でも俺にとって脅威だった。
手厚い治療の後、彼は意識を取り戻したが、記憶をなくしていて6歳の時までの記憶しかないんだと、和成が目を潤ませながら打ち明けてくれた。
それで…
智のことは言えなかった。
あっちはあっちで大変だったから、智の事は俺が…
違う。
今がチャンスだと…
正直そう思った。
あの頃 智は生きるのを諦めてた。
あの人に智は渡さない。
渡したくないっ。
でも…
智が戻りたがったら…?
あんなに…好きだったのを知ってる。
とても大切に思って愛してた。
彼の将来ばかり心配して楽しみだと喜んでいた。
その姿は本物のお兄さんで、俺はいつだって嫉妬を覚えた。
ただ弟だと言うだけで、無条件に与えられる惜しみない愛情。
だが同時に弟だから苦しんでいた。
躊躇っていた。
そんな貴方を…憎む…?
「憎むって…どういう事…?」
一つだけ心当たりがあった。
もしあるとしたらソレ…
智のお母さんと櫻木のお父さんが何かあるなら…
だが智は俺が想像もしない事を言った。
『翔くんのお母さんが亡くなったのが…。』
声が震えていた。
顔から血の気が引いてる。
智…?
『俺と母さんのせいだから…。』
…?
櫻木先輩のお母さんが死んだのが、智と…智のお母さんのせい…?
何を言ってるのかが分からない。
彼女の死因は事故だった。
「サクラギ」の社長を務めていた櫻木葉月は、大きな事故で亡くなっていて、それはニュースでも大きく取り上げられていた。
新幹線の脱線事故。
多大な被害を出し、多くの死傷者も出した。
「サクラギ」の重役の死は、学園内でも大騒動だった。
何故それが、智と智のお母さんのせいになるんだ…?
智の真っ赤になった目から涙が流れていた。
『…ごめっ…。』
「智…。」
俺は泪が止まらなくなった智を再び抱きしめて………キスした…
ごめん…
もういいよ。
もういい。
貴方が傷ついて苦しんでいたのを知っていたのに、自分の不安から聞いてしまった。
貴方は一度も聞いてこなかったのに…
彼の事は何も…
きっとソレが今の貴方の全てだ。
「もういいよ。ごめん…言いたくない事、言わせて…。」
『違うっ…。』
…違う…?
智はしゃくりあげながら それでも言った。
『優に…話そうと思ってた…ヒック………俺が…消えてしまいたかった…理由。』
そして…
優と…やり直したいんだ。
智は…
そう俺に
はっきり告げた。
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