ダイゴロウと17歳の私

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 私は17歳になったある日から、不老不死になってしまった。原理とか原因はよく分からないし説明も出来ないけれど、親が亡くなってから自分の年齢を数えるのはやめた。 「もう、ちゃんと起こしてって言ったじゃんダイゴロウ!」  今の唯一の家族はカメのダイゴロウ。かれこれ180年以上を一緒に過ごしてきた気がする。  慌てて身支度を済ませながら食パンをちぎって頬張る。ダイゴロウにもご飯を、といつもの置き場に駆け寄ったところで違和感を抱いた。 「ダイゴロウ? ご飯出すよ、食べるでしょ?」  改めて声を掛けるもダイゴロウは姿を現さない。時間がギリギリであることも忘れて家の中を歩き回って探す、大きな甲羅のシルエットは庭のいけ近くにいた。  確かめるのも恐ろしくて、歩み寄る足が重たい。 「ねえ、冗談よね……まさかぁ……」  ダイゴロウは力なくぐったりとしていた。手足を触ってみても動かなくて、まるで昼寝してるみたいに静かに目を閉じている。 「やだ、やだやだ、そんなのやだよう……待ってよ……っまた私ひとりに、なっちゃうじゃん……!」  涙が止まらない。こんなに長く一緒に居られたのは初めてで、私にとって遠い昔に亡くなった両親よりも身近な存在になっていた。それなのに。 「う、うぅ、やだよ……ダイゴロウ、待ってよぉ……!」  その時、ダイゴロウの薄く開いた口から光を放つたまがゆっくり出てきた。その光は私の前で一層眩しく輝くとカメの前足のようなものを差し出してきたので、それに手を添える。今まで感じていた重力がすべて無くなったみたいにふわりと身体が浮いて、いつの間にか光はダイゴロウの形になっていた。  あの日から既に人間ではなかった、それでもと受け入れてくれた両親の傍にいる時でさえ自分は化け物なんだと思わされるばかりだった、それがようやく――向かうべき場所へ連れてってもらえるのだと思った。 「だいすき、ありがとうダイゴロウ」  ダイゴロウは私にいつもの優しい顔で笑んでくれた。
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