雨がやむまで

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 友人がトイレから戻ってくると、雨が降っている、と言った。 「えー、どうしよう。私、傘もってきてないよ。駅まで遠いから濡れちゃうね」  隣りに座っているバイト先の先輩が困った顔をする。  正面に座った友人はポケットからスマホを取り出し、ささっといじると 「ああ、でも夜にはやむみたいですよ。飲んでれば雨あがるんじゃないかな」  と言う。 「そっか。じゃあ雨がやむまで飲もっか。カシスオレンジ追加しよ〜」   先輩は嬉しそうに店員さんを呼んだ。  それからしばらく三人で飲んでいると僕のスマホが鳴った。彼女からだった。彼女との会話を二人に聞かれるのが恥ずかしくて、店の外に出た。  店先で彼女と話しながら空を見上げ、ふと気づく。  雨がやんでいる。  席に戻る途中、通りかかった馴染みの店員さんに「雨やみましたね」と言うと、「え、雨なんて降ってませんよ」と笑われた。  そういえば道も濡れていなかった。  友人は酔ってたのか?  酔ってはいた。  いつもは落ち着いている友人が、今日はやけにテンションが高くて楽しそうだった。    バイト先から先輩と帰る途中、偶然幼なじみとばったり会って、三人で飲みにいくことになったわけだけど。  ああ、そうか。  僕は席に戻った。 「外に出てみたけど、雨、まだ降ってたよ。もう少し飲もう」  先輩についた嘘は後で僕があやまるか。
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