プロローグ

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* 「なぁ、迷いの森って知ってるか?」  昼休みの時間に私に問いかけてきたのは光希だった。 「あの森でしょ?狭間山の麓にある」  勿論私は知っていた。というか、この町に住む人間なら、その存在を知らぬものなどいない。  私達の通う高校は、狭間山と呼ばれるこの町のシンボルの近くにあった。晴れた日には教室の窓からその荘厳な姿を確認することができる。しかし誰もその山に興味などなかった。慣れというものは怖いものだ。  そしてその山の麓には森があった。その森にはある噂があった。 「1度足を踏み入れたなら、生きて帰ってくることはない」  誰が言ったか知らないが、その噂が一人歩きし、今では有名な心霊スポットとしてその名を馳せることとなった。森からしたら良い迷惑だろう。そして終いには、自殺志願者御用達の、人生に疲れた者が過ごす最期の楽園になってしまい、本当の意味で心霊スポットになってしまったのだ。
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