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「あれ、ここから道がねぇな」
光希と夏樹が足を止めた。私達は今まで、森にあった轍に沿って歩いていたが、あるとこからその道標がなくなっていた。
「しゃあねぇ、ここから引き返すか。」
光希は振り返って、私と美加を見つめた。私は以前として美加の手を握ったままだった。
「お前、いつまで美加の手握ってんだよ。ビビりすぎ」
光希は私を茶化すように言って笑った。心底腹が立った。私の貴重な休日を、この森に抱く恐怖心となにも起こらなかった失望で埋めやがって。
「じゃあ帰って俺んちでスマブラしようぜ」
光希がそう言って道を引き返そうとしたときだった。
バサバサバサッ!
急にカラスが数十羽、私達の周りから飛び去った。夜だからその黒い姿をはっきりと確認することは出来なかったが、その羽音は一瞬、私達を恐怖に包んだ。
「うわ、何だったんだ今の」
光希が少ししてから言った。
「また来るぞ」
夏樹がそう言った。彼は光希が振り返ったあとも一人、轍が消えた森の中をじっと見つめていた。そしてその瞬間、またカラスが、いや、あれはカラスなのか。黒い数多の影が私達を包んだ。
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