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辺りは完全な暗闇に包まれた。私は掴んでいた美加の手を改めて強く握り、声をかけた。
「美加、絶対に放さないで!」
「うん、わかった」
このときばかりは、愉快に談笑していた二人も声色が震えていた。
「おーい、みんないるか!」
どこからか光希の声がした。近くにいるのはわかるが、暗すぎて姿は見えない。
「いるよー!」
今度は美加の声だ。私のすぐとなりにいる。はず。私は不安に刈られたが、この手が彼女の手を握っている。
「とりあえず、来た道を引き返そう。真っ直ぐ歩けば入り口に戻れる」
あまり彼のことは知らないが、こういう時でさえクールでいられる夏樹にはひどく安心感を覚えた。唯一不安なのは、その顔が見えないことだ。
彼の言う通り、私達は森の入り口から真っ直ぐ歩いてきただけだった。順当に考えれば、180°向きを変えて真っ直ぐ歩けば帰れるはずだ。
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