4人が本棚に入れています
本棚に追加
/160ページ
私は心底安心した。このまま真っ直ぐ歩き続ければ、この闇から抜け出せるのだと。みんなの喋り声も近くにある。美加の手も握っている。あとは真っ直ぐ歩くだけでいいのだ。早く帰って眠りにつきたい。光希の家でスマブラでも構わない。兎に角、この暗闇から抜け出せさえすれば、何でもよかった。
私は光のもとにその姿を現した。先程までは自分の姿も見えないほどの暗闇だった。ほんの小さな光ですら、まるで陽光のように眩しく感じられ、思わず私は目をつぶった。
「ハァー、怖かった」
私は握っている手、その手の主、美加の方を振り向いて笑顔を見せた。しかし、そこに美加の姿はなかった。
「えっ」
私が美加の手だと思ってずっと握っていたのは、手の形に似た木だった。あまりに強く握っていたので、その感覚が麻痺していたが、その木には私の温もりが残っていた。私はいつからこの木を握っていたのだろう。そして、美加は何処へ行ったのだろう。私は力が抜けてしまい、握っていた木は手から滑り落ち、カランと音を立てて地面に跳ねた。
最初のコメントを投稿しよう!