プロローグ

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 私は振り返る。辺りを見渡す。美加はやはりいない。いや、それどころか光希も夏樹も、みんないない。あれ?なんで?私達、一緒に歩いてたよね。声も足音も聞こえてたよね。なんで?もしかして、私、道を間違えたのかな。  私は光の元を見た。そこにあったのは入り口の外灯ではなく、小さな木造の小屋の窓からこぼれた一筋の光だった。  あれ、私もしかして、迷った? *  ここはどこだ。  私はその小屋の周りを歩き回った。みんなの名前を呼び続けながら。しかし返事はない。木と草が邪魔だ。歩くのが徐々に難しくなる。私の体力が次第に奪われ始め、完全に疲れはててしまった。涙目になりながら私は肩幅よりも狭い歩幅で知らない道を、途方もない暗闇を歩いた。スマホで連絡を取ろうとも思ったが、完全に圏外だった。どうしよう。何を頼ればいいのだろう。私は完全に諦めていた。この森から出ることも、みんなと再び会うことも。
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