僕と幼なじみとそれから……

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 夢を見た。非常に鮮明な過去の夢である。  幼なじみはイジメられていた。僕の通う学校には、とんでもない悪辣なガキ大将が居た、いや、もう中学生なのだからガキ大将という表現は些か間違っているかもしれないが、とにかく、ガキ大将が居た。  ソイツは他のガキ大将と同じく、独占欲が強く、我儘で横暴で、誰かを傷みつけることを生き甲斐としているような人間であった。  そんな、ガキ大将の標的に選ばれたのが幼なじみであった。原来、幼なじみは正義感が強く、ガキ大将の傍若無人な行動に嫌気が差しており、鬱憤が爆発したのか、ある日幼なじみはガキ大将に注意をした。  それが、ガキ大将の気に障ったのだろう、それから、幼なじみは熾烈なイジメを受けるようになる。  どんなイジメかと言うと、上靴の中に画鋲を入れられたり、物を隠したりする陰湿なものから、トイレ中に水をかけられたり、机や黒板に悪口を書かれるなどの、芝居がかったものまで、多岐に渡った。  僕はただ、傍観者でいるしかなく、それは学校の教員も同様だった。厄介なことにそのガキ大将の父親は教育委員会とコネがあるとからしく、教員どもはなす術なく、ガキ大将の非道な行いに屈服していた。  幼なじみは残忍で凄惨なイジメに、精神はドンドンと病んでいった。手首を自傷をするようになったり、妙な魔術書集めに執心するようになった。  しかし、僕はどうすることもできずにいた。今はそのことを悔やんでいる。  そんな夏の日暮れ、僕は遊びの帰りだった。偶然、幼なじみがガキ大将と数人の舎弟に、川原で暴行を受けている現場を発見してしまった。  幼なじみは半裸だった。  その時、僕の中で何かが弾けた。僕は妹とも等しい、幼なじみを守るべく、ガキ大将に喧嘩を挑んだ。  乗っていた自転車を投げ捨て、土手を走り、川原に躍り出て、何か威勢の良い言葉でガキ大将を挑発し、喧嘩はスタートする。  無論、ガキ大将はガキ大将然とした体躯であり、取り巻きもいる。  勝敗は火を見るより明らかだった。多勢に無勢、僕は川原でリンチにされた。しかし、幼なじみは僕がボコボコにされている間に逃げることができたので、僕の行いは意味を成したと言えるだろう。  しかし、残念なことに幼なじみは自殺してしまった。余程、処女をあのような形で奪われたのがショックだったのだろう。学校の屋上から、飛び降りて、死んだ。  ガキ大将達は未だ、ノウノウと生きている。  そこで目が覚めた。嫌な夢だ……僕は額に浮かぶ、ストレス性の汗を拭う。時刻は午前二時過ぎだった。  久しぶりにスマホが振動する。  連絡を寄越したのは、謎の女性、ナマアだった。  恐らく、彼女は幼なじみの親戚だ。  結果はどうであれ、僕は幼なじみを救おうとした。彼女は僕のその行為に感謝して、僕の願いを一つ叶えようと言っているのかもしれない。  きっと、そうだ。僕は電話に出る。 「もしもし」 「あー、もしもし、願いは決まった?」 「うーん、まだです」 「ったくー、早くしろよなー」  ツンデレなのだろうか? 僕は彼女と面と向かって話したくなった。 「あの、僕と一緒に散歩でもしませんか?」 「お! それが願いか?」 「いえ、提案です」 「まぁ、分かった」  僕は幼なじみの部屋の方を見ると、彼女がこちらに向かいウィンクしてきた。
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